サンタ・エスメラルダ

サンタ・エスメラルダは、1977年に結成されたアメリカとフランス出身のミュージシャンたちによるディスコ・グループです。彼らは特に、1960年代のロックバンド、アニマルズのヒット曲「悲しき願い（Don't Let Me Be Misunderstood）」を大胆にディスコアレンジしたバージョンで世界的に有名になりました。

グループの誕生と初期のキャリア

グループの中心人物であるリロイ・ゴメスは、マサチューセッツ州でカーボベルデにルーツを持つ家庭に生まれ育ちました。幼い頃から歌とサックスを学び、14歳で自身のバンドを立ち上げています。その後、同じカーボベルデ系のファミリーグループであるタヴァレスに参加し、北米やヨーロッパを巡るツアーを経験しました。

1973年、パリに滞在していたゴメスは、エルトン・ジョンのアルバム『黄昏のレンガ路』のレコーディングにサックス奏者として参加する機会を得ました。この経験がきっかけとなり、彼はスタジオ・ミュージシャンとしての活動の場を広げ、タヴァレスから離れてヨーロッパで音楽活動を続けることを決意します。そこで彼は、新たなアーティストの才能を発掘し世に送り出すことを目指して自主レーベルを設立した作曲家のニコラス・スコースキーとジーン・マヌエル・デ・スカラノに出会いました。サンタ・エスメラルダは、この3人の才能が融合することによって誕生したプロジェクトでした。

「悲しき願い」の大ヒットと成功

1977年、サンタ・エスメラルダはゴメスをリードボーカルに迎え、アニマルズの「悲しき願い」をタイトル曲としたデビューアルバムをフランスの独立レーベルから発表しました。この曲のサンタ・エスメラルダ版は、従来のディスコサウンドに、フラメンコスタイルのギター、力強いホーンセクション、そしてロックのエレキギターサウンドを融合させた革新的なアレンジが特徴でした。この独特なサウンドはヨーロッパで大きな反響を呼び、アルバムはディスコミュージック界の大手、カサブランカ・レコードとの全世界配給契約を獲得するに至ります。最終的にアルバムはゴールドディスクを獲得し、彼らの名を世界に知らしめました。

「悲しき願い」のシングルB面には、美しいラブバラード「You're My Everything」が収録されていました。この曲はチャートインには至らなかったものの、ラジオ局には多くのリクエストが寄せられ、リスナーの間で人気を博しました。また、彼らはアニマルズのもう一つの代表曲「朝日のあたる家（The House of the Rising Sun）」もディスコアレンジでカバーし、この曲もディスコチャートでトップ20入りを果たしています。

グループの成功に伴い、ダンサーを含むパフォーマンス集団が編成され、世界ツアーが開始されました。ツアーに参加したダンサーの一人、テキーラは後にゴメスの妻となっています。

その後の活動と再評価

1978年には、ディスコ映画『イッツ・フライデー（Thank God It's Friday）』のサウンドトラックに「セヴィリア・ナイツ（Sevilla Nights）」を提供し、サウンドトラックのヒットに貢献しました。この年には、デビューアルバムを含む3枚のアルバムがアメリカのポップアルバムチャートにランクインするなど、彼らの人気はピークを迎えます。

その後もいくつかの作品を発表し、1979年には「ビューティ（Beauty）」や「Another Cha-Cha/Cha-Cha Suite」がクラブシーンで注目を集め、ディスコチャートに再びランクインしましたが、以前ほどの成功を持続させることはできませんでした。カサブランカ・レコードの経営悪化と、世界的なディスコブームの終焉という時代の流れの中で、グループの活動は次第に停止していきました。

しかし、サンタ・エスメラルダの物語は終わりませんでした。2002年、リロイ・ゴメスはグループを再編成し、ニューアルバム『Lay Down My Love』をリリースして再びツアーを開始します。2004年には、過去のヒット曲を再レコーディングしたアルバム『The Greatest Hits』を発表し、キャリアを総括しました。そして、クエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル』（2003年）のサウンドトラックに「悲しき願い」のロングバージョンが使用されたことで、若い世代を含む新たなリスナーからも再び注目を集めることとなりました。

サンタ・エスメラルダは、その独創的なアレンジとエネルギッシュなサウンドで、ディスコミュージックの歴史に確かな足跡を残したグループと言えるでしょう。

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