サンダース・ロー

サンダース・ロー株式会社の概要

サンダース・ロー株式会社（Saunders-Roe Limited）は、かつてイギリスに存在した航空およびマリンエンジニアリングの企業で、ワイト島のイースト・カウズに本社を置いていました。サンダース・ローは、航空機や船舶の設計・製造に関わり、特に飛行艇やホバークラフトに強みを持っていました。それでは、この会社の歴史について詳しく見ていきましょう。

歴史的背景

サンダース・ローの起源は1929年に遡ります。この年、アリオット・ヴァードン・ローとジョン・ロードが、船舶メーカーのS.E. Saundersの株式を取得し、社名を変更したことから始まりました。それ以前の1926年から1929年の製品には、サンダースの名で知られる名称が使用されていました。サム・サンダースは、飛行艇や航空機に使われる独自の材料Consutaを開発し、これがサンダース・ローの製品品質に貢献しました。

サンダース・ローは、日常的にはSaroと省略されることもありますが、特に飛行艇の製造に特化した会社として知られています。ただし、同時期に日本のショート・ブラザーズが飛行艇製造で成功したのとは対照的に、サンダース・ローは自社開発による大量生産が行われることは少なく、31機が製造された「ロンドン」が最大の成功例でした。多くの場合、他社製の機体の部品を請け負う形での製造が主な業務でした。

戦時中の活動

第二次世界大戦時には、スーパーマリン社製のウォーラス飛行艇とシーオッター飛行艇の生産を行い、アングルシー島の工場ではカタリナ飛行艇の改良や整備も手掛けていました。1931年には、ホワイトホール・セキュリティ社がサンダース・ローの株式を獲得し、以降スパルタン・エアクラフト社との関係を深めることとなりました。

組織改編と飛行艇の終焉

1938年には組織の再編が行われ、マリン部門は子会社化されました。1952年には、長距離旅客飛行艇であるサンダース・ロー プリンセスが初飛行を果たしましたが、飛行艇の時代は終焉を迎えており、追加で製造された2機は飛行することなく、以降は飛行艇の製造は行われませんでした。1955年には、ショート社の飛行艇改良の活動が継続され、これがサンダース・ローの製造ラインと変わることはありませんでした。

軍事機とホバークラフトの開発

サンダース・ローが最後に手掛けた固定翼機は、複合動力要撃機のサンダース・ロー SR.53でした。また、1951年にはシエルバ・オートジャイロ社の株を取得し、スキーターと呼ばれるヘリコプターを開発しました。さらに、1959年には国立研究開発社の要請によって最初の実用的なホバークラフト、SR.N1を生産しました。

このホバークラフトはその後、商業モデルや軍用モデルへと発展し、サンダース・ローはホバークラフト市場で次第に存在感を高めていきました。1964年にはブリティッシュ・ホバークラフトが設立され、1970年代にはその事業が縮小されていく中で、新しいホバークラフトの開発も続けられました。

企業の変遷

1960年代後半から1970年代初頭にかけて、サンダース・ローのフォリー工場は合併によりグロスター・サロとなり、消防車製造に関する新技術を導入しました。1984年にはChubbグループに買収された後、1987年にサイモン・エンジニアリングとの合併により新たな企業が設立されました。1994年にはウェストランドがGKNに買収され、その後もイースト・カウズの工場は製造活動を続けていきます。

まとめ

サンダース・ローの歴史は、航空機とマリンエンジニアリングの分野において多くの革新をもたらしたことを示しています。ただし、業績や製品の開発には限界もありましたが、ホバークラフトや一部の航空機の製造においては、その技術力が確立されていました。企業の変遷の中でも、サンダース・ローは重要な役割を果たし続けており、その歴史は今も多くの技術者や企業に影響を与えています。

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