サンダース・ロー SR.A/1

サンダース・ロー SR.A/1の概要

サンダース・ロー SR.A/1（Saunders-Roe SR.A/1）は、イギリスのサンダース・ロー社によって開発された試作型水上戦闘機です。この機体は、第二次世界大戦後の時期にイギリス空軍によるテストが行われましたが、正式な採用には至りませんでした。

設計と開発の背景

SR.A/1は、大日本帝国海軍の伝説的な二式水上戦闘機や強風からインスパイアを受けて設計されました。太平洋戦線における戦域が海に囲まれていたため、水上機は特に適した選択肢と見なされていました。また、比較的穏やかな海岸を利用して発進することができるという利点もありました。
水上機の主な欠点は、その浮子式降着装置が陸上戦闘機と比べて飛行性能を劣化させることにありました。そこで、サンダース・ロー社は新たに開発されたターボジェットエンジンに注目し、この問題を克服する可能性を模索しました。プロペラ式のエンジンを排除することで、水面とのクリアランスを気にする必要がなくなり、より胴体を水面に近づける設計が可能になりました。

イギリス航空省との契約

このアイデアは、イギリス航空省に提案され、仕様E.6/44として具体化されました。そして1944年5月には、原型機3機の開発が契約されました。1号機は1947年7月15日に初めて飛行し、続く2号機と3号機によっても検証が進められました。それぞれの機体は、性能や操作性において優れた結果を示していました。しかし、当時には既に第二次世界大戦の終結に伴い、需要は消失してしまっていました。

水上機の時代の終焉

太平洋戦線では、空母が海上航空戦力の中核になれることが証明され、水上機の必要性が薄れてしまったのです。さらに、SR.A/1には視界が狭く、コックピットのキャノピーが重厚に枠組みされていたため、操縦面における困難も課題とされました。これらの理由が重なり、最終的にこのプロジェクトは1951年5月に中止される運びとなりました。

愛称と運用者

正式に名称を与えられることはなかったものの、開発関係者の間では「スクアート」（Squirt）と呼ばれていました。この愛称は古いスラングを基にしており、活動的で生意気な性格を持つ機体のイメージを反映しています。SR.A/1の運用者としてはイギリス空軍が挙げられますが、試験中の事故によって他の2機は失われてしまいました。

機体スペック

SR.A/1は、1名の乗員を乗せる設計で、各種スペックは以下の通りです。

• - 全長: 14.24 m（50 ft）
• - 全高: 5.11 m（16 ft 9 in）
• - 空虚重量: 5,108 kg（11,262 lb）
• - 運用時重量: 7,360 kg（16,225 lb）
• - 最大離陸重量: 8,633 kg（19,033 lb）

性能

• - 最大速度: 824 km/h（512 mph）
• - 航続距離: 1,920 km（1,200 miles）
• - 上昇率: 1,768 m/min（5,800 ft/s）
• - 翼面荷重: 190 kg/m²（39 lb/ft²）

武装

• - 固定武装: 20 mm イスパノ Mk 5 × 4
• - ロケット弾: 120 lb（55 kg） × 16
• - 爆弾: 1,000 lb（454 kg） × 2

まとめ

サンダース・ロー SR.A/1は、歴史的な機体でありながらも、試験の過程で見つかったさまざまな課題によって運用されることはありませんでした。その結果、空母を中心とした海上航空戦力の時代に適応できなかった一例として、航空史に名を刻むことになりました。

もう一度検索