サンチャリオット

サンチャリオット：戦火の時代を駆け抜けた名牝

サンチャリオットは、第二次世界大戦下のイギリスで活躍した競走馬として、その名を歴史に刻みました。「太陽神の戦車」を意味するその名にふさわしく、彼女はイギリス競馬史に燦然と輝く功績を残しました。

生まれと初期の活躍

アイルランドのイギリス国立牧場（現在のアイリッシュ・ナショナルスタッド）で生まれたサンチャリオットは、セリ市に出されることなく、例外的に王室所有馬となりました。華奢な体格ながらも、優れた運動能力を備えていた彼女は、1941年6月6日のデビュー戦を勝利で飾ります。続くクインメアリーステークス、ソールズベリーステークスと立て続けに勝利を収め、その才能を早くも開花させました。

ドイツ軍による空襲が激化する中、レースへの出走は一時控えられたものの、10月のミドルパークステークスでは優勝。この勝利により、彼女は2歳馬の能力順位を決定づけるレースでトップに立ち、将来への期待を高めました。

イギリス牝馬三冠達成

1942年シーズン、初戦のサウザンステークスで初黒星を喫したものの、続くサラムステークスを制覇。そして、1000ギニーでは圧倒的な人気に応え優勝し、クラシックへの道を切り開きました。勢いに乗るサンチャリオットは6月のオークスも制し、イギリス牝馬クラシック二冠を達成しました。

夏期のレースは空襲の危険を避けて回避されましたが、9月のセントレジャーステークスでは、ダービーステークス優勝馬ワトリングストリートを相手に3馬身差をつけて圧勝。38年ぶり7頭目となるイギリス牝馬クラシック三冠の偉業を成し遂げました。この年の3歳フリーハンデでは、ビッグゲームと並んで首位にランクインするなど、その年の活躍を改めて証明しました。

引退と繁殖牝馬としての成功

戦時下という状況もあり、1943年はほとんどのレースが中止となったため、サンチャリオットは1度も出走することなく競走馬を引退しました。しかし、彼女の輝かしい功績は、ここで終わらなかったのです。

引退後はギリンガム国立牧場で繁殖牝馬となり、数々の名馬を産みました。ブルートレイン、ランドー、ジャイガンティック、ピンダリ、ジャヴリン、イカルスといった産駒は種牡馬となり、イギリス、ニュージーランド、そして日本へとその血統を広げました。その中でも、ジャヴリンは東京優駿の勝ち馬カツラノハイセイコの母の父として、日本競馬史にも名を刻んでいます。サンチャリオットの牝馬の産駒であるゲイムカートも日本へ輸出され、繁殖牝馬として活躍しました。

サンチャリオットの偉業を称え、牝馬限定のG1レース「サンチャリオットステークス」が創設されていることからも、彼女がイギリス競馬界に残した影響の大きさがわかります。華奢な体格ながら、類まれな才能と強靭な精神力で戦火の時代を駆け抜けたサンチャリオット。その伝説は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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