サンチョ6世 (ナバラ王)

サンチョ6世：ナバラ王国の賢王

サンチョ6世（1133年頃 - 1194年6月27日）は、12世紀のナバラ王国の国王であり、「賢王」（el Sabio）として知られています。父王ガルシア6世と王妃マルガリータの息子として生まれ、1150年に王位を継承しました。彼は、その治世において、ナバラ王国の発展と周辺諸国との複雑な関係を築き上げました。

生涯

サンチョ6世は即位後、自身の称号から「パンプローナの」という言葉を外し、単に「ナバラ王」と名乗るようになりました。これは、彼の統治がナバラ王国全体に及ぶことを示す象徴的な変化でした。彼は、1180年にギプスコアの港町サン・セバスティアンに特権（フエロ）を与え、海運と通商を法制化することで、都市の発展を促進しました。この政策は、ナバラ王国における都市化を大きく進める要因となりました。

周辺国との関係

サンチョ6世の治世は、アラゴン王国やカスティーリャ王国との対立に多くを費やしました。1168年にはアラゴン王アルフォンソ2世と密約を交わし、バレンシアとムルシアを支配していたイブン・マルダニーシュの領土分割を企てて侵攻しました。しかし、1164年には、妻の甥にあたる幼いカスティーリャ王アルフォンソ8世を狙い、レオン王フェルナンド2世と結託してラ・リオハへ侵入しました。これに対し、1173年にはアルフォンソ8世がアラゴンとイングランド王ヘンリー2世の協力を得て反撃し、その結果、カスティーリャに有利な形で和睦しました。

しかし、サンチョ6世は1190年にカスティーリャに反発するアルフォンソ2世と同盟を結び、翌1191年にはポルトガル王サンシュ1世とレオン王アルフォンソ9世を加えて反カスティーリャ同盟を成立させました。また、同年にはカスティーリャに対抗するために、アキテーヌ公も兼ねていたイングランド王リチャード1世と娘ベレンガリアを結婚させ、リチャード1世からバス＝ナヴァール（現在のフランス領バスク）を与えられました。これらの外交戦略は、ナバラ王国が周辺諸国との関係の中で生き残るための、サンチョ6世の知恵を示しています。

死と後継

サンチョ6世は1194年6月27日にパンプローナで亡くなり、長男のサンチョ7世が王位を継承しました。彼の治世は、ナバラ王国の歴史において重要な転換期であり、その後の王国の発展に大きな影響を与えました。

子女

サンチョ6世は、1157年にカスティーリャ王アルフォンソ7世の王女サンチャと結婚し、多くの子女をもうけました。

サンチョ7世（1154年 - 1234年）：ナバラ王（1194年 - 1234年）
フェルナンド
ラミロ（1228年没）：パンプローナ司教
ベレンガリア（1165/1170年 - 1230年）：イングランド王リチャード1世妃
ブランカ（1177年 - 1229年）：シャンパーニュ伯ティボー3世妃、ナバラ王テオバルド1世の母

サンチョ6世の子供たちは、それぞれがヨーロッパの歴史に名を残しており、彼の遺産を後世に伝えています。

まとめ

サンチョ6世は、その知性と外交手腕により、ナバラ王国を繁栄に導いた賢王でした。彼の治世は、都市の発展、周辺国との複雑な関係、そして後継者たちの活躍など、多くの重要な要素を含んでいます。サンチョ6世の生涯は、中世ヨーロッパ史におけるナバラ王国の位置を理解する上で、非常に重要な鍵となるでしょう。

参考文献

レイチェル・バード著、狩野美智子訳『ナバラ王国の歴史 山の民バスク民族の国』彩流社、1995年。
D.W.ローマックス著、林邦夫訳『レコンキスタ 中世スペインの国土回復運動』刀水書房、1996年。
芝修身『真説レコンキスタ <イスラームVSキリスト教>史観をこえて』書肆心水、2007年。
西川和子『スペイン レコンキスタ時代の王たち 中世800年の国盗り物語』彩流社、2016年。

関連項目

トゥデラ
オンダリビア
ナヘラ
ドゥランゴ (スペイン)
ビトリア＝ガステイス
* ラグアルディア

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