サンディニスタ民族解放戦線

サンディニスタ民族解放戦線（FSLN）：ニカラグア革命とその後

サンディニスタ民族解放戦線（FSLN）は、ニカラグアで20世紀後半に台頭した左翼政治運動、そして政党です。その名は、1930年代にアメリカ合衆国の侵略に抵抗した国民的英雄アウグスト・セサル・サンディーノに由来し、彼らの活動はサンディニスモと呼ばれています。

創設と初期の闘争

FSLNは1961年、キューバ革命の影響を受けた若者たちによって設立されました。トマス・ボルヘやカルロス・フォセンカといった指導者たちは、アナスタシオ・ソモサ・デバイレ独裁政権打倒を目指し、武装闘争を開始しました。1972年の大地震後の混乱に乗じて勢力を拡大し、人質事件などを成功させることで国民の支持を獲得していきました。

内部的には、農村部を基盤とする「持久人民戦線派」、都市部労働者を重視する「プロレタリア潮流派」、そして幅広い層への支持を訴えた「第三の道派」の3つの派閥が存在し、激しい論争を繰り広げていましたが、1978年に反政府指導者の暗殺を契機に、これらの派閥間の対立は沈静化していきました。同年にはマナグア国家宮殿占拠事件を起こし、国民の共感を呼ぶことで大きな転機を迎えました。

ニカラグア革命と政権掌握

1979年、FSLNは大規模な軍事攻勢を開始し、ついにソモサ政権を打倒、ニカラグア革命を成功させました。ダニエル・オルテガ率いる「第三の道派」が中心となり、新たな政権が樹立されました。ソ連やキューバといった共産圏諸国との緊密な関係を築き、社会主義的な政策を進めていきました。

しかし、革命後のFSLN政権は、アメリカ合衆国からの強い反発を受けました。アメリカは、ニカラグアが第二のキューバになることを懸念し、経済制裁や、ソモサ派残党やFSLNからの離脱者などを含む右翼ゲリラ「コントラ」への支援を行いました。これにより、ニカラグア内戦が長期間に渡り勃発することになります。

ダントー作戦とアメリカ合衆国の介入

1988年、FSLN政権はコントラに対する大規模攻撃作戦「ダントー作戦」を実施しようとしました。この作戦への対応として、アメリカはホンジュラスに大規模な軍事部隊を展開し、「黄金のキジ作戦」と称する軍事演習を行いました。このアメリカ合衆国の介入によって、ダントー作戦は中止され、停戦交渉が進められました。

政権喪失と復活

しかし、ソ連の崩壊、内戦の長期化、経済制裁による貧困化などにより、FSLN政権は国民からの支持を失っていきました。1990年の総選挙で敗北し、11年間続いた革命政権は終焉を迎えます。その後、FSLNは党内対立を抱えながらも、議会における存在感を維持し続けました。

そして2006年、オルテガは穏健な政策を掲げ大統領選挙に勝利、政権に復帰を果たしました。2011年の選挙でも再選を果たし、現在もニカラグアの政治において大きな影響力を持っています。しかし、2019年には、反体制派への弾圧を理由に社会主義インターナショナルから除名されるなど、その政治姿勢は国際的な批判の対象にもなっています。

思想とシンボル

FSLNの思想はサンディーノの思想をベースとしつつも、共産主義的な要素を取り入れており、内部には様々な派閥が存在していました。そのシンボルである旗は、サンディーノがかつて使用した旗を原型としており、赤と黒を基調としたデザインとなっています。

結論

サンディニスタ民族解放戦線は、ニカラグアの歴史に大きな影響を与えた政治勢力です。革命の成功、内戦、政権交代、そして復活劇など、その歴史はドラマチックであり、ニカラグアだけでなく、冷戦時代の国際情勢を理解する上でも重要な事例となっています。その複雑な歴史と様々な側面を理解することで、現代ニカラグアの政治状況をより深く理解できるでしょう。

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