サンデープロジェクト糾弾事件

サンデープロジェクト糾弾事件とは

2005年1月23日、テレビ朝日系の報道番組『サンデープロジェクト』で、食肉偽装事件を起こしたハンナン（現ハニューフーズ）の浅田満に関する特集が放送される直前、番組内で出演者による差別発言があったとして、部落解放同盟中央本部が抗議し、糾弾闘争に発展した事件です。

事件の経緯

番組では、ジャーナリストの大谷昭宏と内田誠が取材した「『食肉のドン』の犯罪―政官業利権構造」というVTRを2週にわたって放送する予定でした。問題となったのは、第1弾のVTR放映直前に、コメンテーターの田原総一朗氏と高野孟氏が交わした発言でした。

田原氏は、浅田満氏の事件を報道しないマスコミを批判し、「この人（浅田満）が被差別部落の何とかといって恐れている」と発言。高野氏は「タブー視されてきた」と応じました。さらに田原氏は「この人は被差別部落をタブー視しないからできる」と発言し、高野氏は「大阪湾に浮くかもしれない」と付け加えました。司会のうじきつよし氏が「危ないですよ2人とも」と制止しましたが、これらの発言は生放送で放送され、テレビ朝日と朝日放送のプロデューサーが番組内でお詫びアナウンスをすることになりました。

放送後、テレビ局には抗議の電話が殺到し、部落解放同盟にも放送を問題視する電話が相次ぎました。部落解放同盟は、VTRを確認後、テレビ朝日に抗議を申し入れました。

問題点

部落解放同盟は、田原氏の発言が浅田満氏と被差別部落を短絡的に結び付けている点、高野氏の発言が部落問題を取り上げると身に危険が及ぶという偏見を助長している点を問題視しました。また、番組の特集タイトルが「50億円の犯罪」であるにもかかわらず、VTR放映前の説明が部落差別のタブーに挑戦するという内容になっており、番組の趣旨が歪曲されていると指摘しました。

謝罪

翌週の放送で、司会の宮田佳代子氏が謝罪し、田原氏、高野氏、うじき氏も発言について謝罪しました。田原氏は、自身の発言が浅田満氏の犯罪と部落差別を結びつけるような誤解を与えたことを反省し、高野氏は、人権意識普及向上のために活動してきたにもかかわらず、差別と犯罪を結びつけるような発言をしたことを謝罪しました。

その後

テレビ朝日の広瀬道貞会長は、社内に擁護する声はなく、法にも違反したメディアとして許されないことだとコメントしました。朝日放送の西村嘉郎社長も、差別であると深刻に受け止めていると述べました。

部落解放同盟とテレビ局側の話し合いはスムーズに進みましたが、その後、テレビ局側と出演者側の間で対応に違いが生じ、主張に隔たりが出ました。部落解放同盟が主張した出演者・製作者合同での確認・糾弾会は、田原氏が「テレビ局のトップを出すのはおかしい」と主張し、実現しませんでした。その後、複数回の確認会と糾弾会を経て、両者の話し合いは終結しました。

部落解放同盟への批判

灘本昌久氏は、この事件に対し、部落差別として糾弾すべき問題はなく、今回の糾弾が部落解放運動によるハンナングループへの側面支援のように見えると批判しました。さらに、番組への抗議や糾弾の内容は、部落解放運動の歴史を汚し、運動に対する信頼を大きく損なうものだと述べました。

この事件は、メディアにおける差別問題の難しさを示すとともに、部落問題に対する社会の無理解を浮き彫りにした出来事として記憶されています。

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