サント・クロチルド聖堂

サント・クロチルド聖堂

パリの第7区に静かにたたずむサント・クロチルド聖堂は、正式名称を「サント・クロチルドおよびサント・ヴァレリー大聖堂（La Basilique Sainte-Clotilde et Sainte-Valère）」といいます。その名の通り、フランク王国の王妃であった聖女クロチルドと、リモージュの殉教者である聖女ヴァレリーに捧げられたこの教会は、19世紀半ばに建てられたネオゴシック様式の美しい建築物です。

この聖堂の建設は、1827年にパリ市議会によって決定されました。設計と着工は、1846年に建築家フランツ・クリスティアン・ガウの手によって行われましたが、彼の死後、事業はテオドール・バリューに引き継がれました。約11年の歳月をかけて建設は進められ、1857年に無事竣工。同年11月30日には、モルロ枢機卿によって献堂式が執り行われました。さらに、建設から約40年後の1897年、フランク王クローヴィスの受洗1400年という節目を記念して、ローマ教皇レオ13世によってバシリカ小聖堂の地位に昇格されました。

外観は、やや厳格ながらも気品漂うネオゴシック様式が特徴です。特に目を引くのは、高さ69メートルに達する2本の尖塔が空に向かって伸びている姿でしょう。この荘厳なファサードは、パリの街並みに独自の存在感を放っています。

聖堂の内部空間は、外観の印象とは異なり、晴れやかでかつ荘厳な雰囲気に満ちています。そこには、見る者を魅了する数々の芸術作品が収められています。19世紀の名工ティボーによる美しいバラ窓をはじめとするステンドグラスは、降り注ぐ光を多彩な色彩に変え、堂内を神秘的に彩ります。また、ルヌヴーによる絵画『聖処女の礼拝』や、プラディエ、デュレの手による彫刻群『十字架の道』が壁面を飾ります。特に注目すべきは、ウジェーヌ・ギヨームによって制作された、聖女ヴァレリーの生涯、すなわち彼女の回心、死刑宣告から斬首、そして聖マルシアルへの顕現といった劇的な場面を描いた一連の彫刻です。さらに、比較的近年では、2007年にグルジア出身の彫刻家で金銀細工師であるグジによって、新たな大祭壇が制作・設置され、内部空間に新たな要素が加わっています。

サント・クロチルド聖堂は、その建築美だけでなく、音楽史においても重要な役割を果たしてきました。聖堂内には、フランスの著名なオルガン建造家であるアリスティド・カヴァイエ＝コルによって設計・建造された、名高いパイプオルガンが設置されています。この優れた楽器は、数多くの偉大な作曲家やオルガニストを惹きつけ、彼らがこの聖堂で教会オルガニストを務めてきました。歴代の著名なオルガニストとしては、以下のような人々が挙げられます。

セザール・フランク（1859年－1890年）
ガブリエル・ピエルネ（1890年－1898年）
シャルル・トゥルヌミール（1898年－1939年）
ジョゼフ＝エルマン・ボナル
ジャン・ラングレー（1945年－1987年）
ピエール・コジャン（1987年－1993年）
ジャック・タデイ（1987年－2012年）
オリヴィエ・ペニン（2012年－現在）

これらのオルガニストたちは、この素晴らしい楽器を用いて数々の名演を行い、聖堂の音楽的伝統を築き上げました。

聖堂は、隣接するサミュエル・ルソー庭園を高い位置から見下ろす場所に建っています。聖堂の窓からは、庭園に植えられたマロニエ、エンジュ、セイヨウハナズオウといった様々な樹木を眺めることができ、都心にあっても自然の息吹を感じられる環境にあります。

サント・クロチルド聖堂は、その壮麗な建築、豊かな歴史、そして芸術的・音楽的な遺産を通じて、パリの文化と信仰の重要な一部であり続けています。

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