サンヨウコガタスジシマドジョウ

サンヨウコガタスジシマドジョウ

サンヨウコガタスジシマドジョウ（学名：Cobitis minamorii minamorii）は、山陽地方に特有のコガタスジシマドジョウの亜種として知られています。この魚は、岡山県瀬戸内市の吉井川水系を起源とし、一般的に「しまどじょう」や「どじょう」と呼ばれ親しまれています。

分布

日本国内では、本州の兵庫県西部や岡山県、広島県の西部に位置する瀬戸内海の水系に分布しています。具体的には河川のワンドや下流域、または平野に点在する小川や用水路など、水の流れがわずかに存在する砂泥や礫の底を好む生息地です。

形態

サンヨウコガタスジシマドジョウの全長は約4～7cmであり、同じくドジョウ科に属する魚と比べると体高が後方に向かって明らかに低くなります。特に尾柄部分は最も低く、雌は雄よりも大きな体躯を持ちます。口ひげの数は3対あり、体色は淡い黄褐色または乳白色が特徴です。

体側には不規則に途切れたり、くびれたりする暗褐色の縦筋が見られ、尾びれにも2～3本の斑点が確認できます。この斑点の後縁は尾鰭の後端を囲むように広がり、背鰭には薄い黒色の斑点がさまざまに散在しています。特に雄の骨質盤は円形であり、類似種のトウカイコガタスジシマドジョウに比べると、サンヨウコガタスジシマドジョウの方が小型で体形も細い傾向があります。

類似の種であるサンインコガタスジシマドジョウとの違いは、尾鰭の形状が明確に異なり、また尾鰭に見られる黒い筋の本数も異なります。体側の縦筋が点の列を形成することが多いのに対して、チュウガタスジシマドジョウは2本のはっきりとした黒い縦筋がばらついていることが特徴的です。

生態

この魚は、砂の中に埋もれたデトリタスや底生小動物を口から吸い込み、砂は鰓を通して排出します。また、ユスリカの幼虫や藻類なども主な食物源としています。繁殖は5月から6月に行われ、川のワンドや一時的な水がたまる場所に移動して産卵します。卵は非常に早く、1日で孵化しますが、繁殖においては雌雄ともに1年で成熟することが分かっています。

保全状況

サンヨウコガタスジシマドジョウは、現在、非常に深刻な保全状況に直面しています。河川の改修や圃場の整備によって、多くの一時的な水域が失われていることが大きな要因となっています。また、河川と水田を結ぶ細流がコンクリートで補強されることにより、繁殖に必要な環境が悪化しています。このような環境変化は、特に産卵に必要な細流における高い段差が大きなダメージを与えることが明らかです。

環境省は、この種を絶滅危惧ⅠA類に指定して保護措置を講じていますが、個体数は依然として回復の兆しが見えていないのが現状です。この状況を改善するためには、さらなる保護策と環境の再生が急務であると考えられています。

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