サン・ジョルジョ銀行

サン・ジョルジョ銀行の歴史と影響

サン・ジョルジョ銀行（イタリア語：Banco di San Giorgio）は、イタリアのジェノヴァに位置し、1148年に設立されたヨーロッパ最古の公式な銀行です。この銀行は、ジェノヴァ共和国の経済を一手に支える役割を果たし、特に教会大分裂の時代には、フランスの影響により、名前を変更することもありました。サン・ジョルジョ銀行は、その存在自体が、預金供託金庫のモデルともなった重要な機関です。

組織と設立の背景

サン・ジョルジョ銀行の本店は、13世紀にジェノヴァの初代ドージェ、シモーネ・ボッカネグラの叔父であるグリエルモ・ボッカネグラの指導の下に建設されたサン・ジョルジョ宮殿に置かれていました。この銀行の設立には、モナコのグリマルディ家をはじめとするジェノヴァの有名な家族が関わっており、運営は4人のコンスルによって行われていました。これらのコンスルたちは、共和国の有力な貴族であることが多く、銀行と共和国の権力関係を把握するのは容易ではありませんでした。

サン・ジョルジョ銀行は、設立当初から共和国に短期の当座貸越を提供し、危機に陥った場合の財政支援を行っていました。しかし、1408年から一般預金を受け入れ始めたことは、銀行にとって不利に働くことになります。特に15世紀前半には、銀貨の価値が下落し、フローリン金貨の相対的な価値が上昇するという経済的不安定が発生しました。これにより、銀行は巨額の損失を被り、取り付け騒ぎを何度も経験しました。その結果、公債利子の現金支払いが難しくなるほどの経済的危機に直面しました。この教訓を踏まえ、銀行は1539年にスクード金貨専用の口座を設け、1606年には銀スクードとスペイン・レアル建ての口座を新設しました。これにより、為替相場の統一が実現しました。

事業活動の展開

サン・ジョルジョ銀行は、ジェノヴァが所有する海外領土のほとんどを直接あるいは間接的に統治していました。しかし、15世紀に入ると、共和国は徐々にその支配権を取り戻していきました。それでも1453年には、コルシカ島やクリミアにあたるガツァリア、他の領土の支配権を銀行の幹部たちに委任しました。また、タマン半島はギソルフィ家によって支配され続けていましたが、その君主も銀行の監督下にありました。

15世紀から16世紀にかけて、サン・ジョルジョ銀行はヨーロッパ各地に多額の融資を行い、特にクリストファー・コロンブスといった著名な人物もその支援を受けていました。さらにカトリック両王であるフェルナンド2世とイサベル1世の口座も存在し、神聖ローマ皇帝カルロス1世は、多くの資金をこの銀行から借り入れていました。16世紀の後半からは、ポルトガルやスペインの貿易事業への融資も行い、17世紀にはオランダ東インド会社やイギリス東インド会社との競争に参画するなど、海洋貿易にも関与しました。これは、日本とのいわゆる「南蛮貿易」も含まれていました。

銀行の終焉

ナポレオンのイタリア遠征を受け、1805年にはフランス銀行が中央銀行として設立されたことにより、サン・ジョルジョ銀行はその役割を終えることになりました。サン・ジョルジョ銀行は、金融史において重要な役割を果たしつつ、多くの経済的な変遷を経験してきた歴史的な金融機関であり、その影響力は当時のジェノヴァ共和国にとって不可欠なものでした。

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