サン・マルコ寺院

サン・マルコ寺院の概要

サン・マルコ寺院（Basilica di San Marco）は、イタリアのヴェネト州の州都・ヴェネツィアに位置する、最も著名な大聖堂です。この寺院は、福音記者マルコに捧げられたもので、ビザンティン建築の名作として広く認識されています。ビザンティン様式は、コンスタンティノープルで500年以上前に流行したものであり、寺院はサン・マルコ広場（Piazza San Marco）向かいに建ち、ドゥカーレ宮殿（Palazzo Ducale）に隣接しています。

寺院内部は豪華で、壁や天井には金箔が施され、祭壇には2,000個の宝石がはめ込まれた金色の障壁が印象的です。1807年からはヴェネツィア大司教座が設置され、「サン・マルコ大聖堂」と呼ばれることが適切ですが、その歴史から「寺院」という名も広く使われています。

歴史

サン・マルコ寺院の歴史は古く、ヴェネツィアがラヴェンナの属領だった751年に遡ります。ヴェネツィアは当時、東ローマ帝国の影響下で巧みに独自性を保ち、交易で富を築いていました。最初の聖マルコに捧げられた教会は、ドゥカーレ宮殿の位置に建てられ、828年にヴェネツィア商人がアッバース朝から持ち帰った聖マルコの遺骨にちなんで建設されたものでしたが、832年には現在の場所に新しい教会が建造されました。

この聖堂は976年に暴動で消失し、978年に再建後、1063年頃にドメニコ・コンタリーニ総督が新たな建設を始め、1090年代にヴィターレ・ファリエル総督によって完成しました。サン・マルコ寺院はその後900年にわたって増改築が続き、現在の姿へと至ります。

寺院は、人気のあるビザンティン建築として知られる聖使徒大聖堂を模して設計され、典型的なクロス・ドーム形式で造られています。寺院の前面には、もともとコンスタンティノープルの競馬場にあった4頭の馬の銅像のレプリカがあります。これらの馬は1204年に略奪され、ヴェネツィアに運ばれました。また、サン・マルコ寺院はヴェネツィア共和国時代、カトリック教会の司教座聖堂ではなく、共和国総督の礼拝堂として機能しました。

1451年にグラードから大司教座が移されましたが、サン・マルコ寺院ではなく、サン・ピエトロ・ディ・カステッロ聖堂が正式に大聖堂でした。そして、1807年にナポレオンによる占領がきっかけで大司教座が移され、サン・マルコ寺院が大聖堂となりましたが、今日でも「寺院」という名称が一般的です。

音楽

17世紀から18世紀にかけて、サン・マルコ寺院はイタリア・バロック音楽の重要な中心地の一つでした。器楽や声楽アンサンブルを擁するカペッラ・マルチアーナが活躍し、著名な音楽家たちが次々と楽長やオルガニストを務めました。寺院の音楽の特徴は、二つのオルガンと聖歌隊席を持ち、複合唱が発達した点にもあります。

この時代の活躍した音楽家には、アドリアン・ヴィラールトやクラウディオ・モンテヴェルディが名を連ねており、他にも多くの音楽家がサン・マルコ寺院で重要な役割を果たしました。16世紀から18世紀にかけ、サン・マルコ寺院は音楽の発展に寄与し、今日でもその名声を保っています。

このように、サン・マルコ寺院は歴史的、文化的にも非常に重要な建物であり、今なお多くの観光客や信者に親しまれています。

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