サヴォイア王家の王宮群

サヴォイア王家の王宮群：トリノ周辺に点在する歴史と芸術の結晶

サヴォイア王家の王宮群は、イタリアのトリノとその周辺に点在する、歴史的、芸術的に重要な複数の建造物群を指します。これらは、リソルジメント（イタリア統一運動）の際に中心的な役割を果たしたサヴォイア家によって築かれ、当時の最新技術を駆使した壮大な建築物として、現在もその威容を誇っています。これらの建造物は、政治の中心地、王家の居城、狩猟のための施設など、様々な目的のために建設され、それぞれが独自の歴史と特徴を持っています。その文化的、歴史的価値の高さから、世界遺産に登録されています。

主な構造物

王宮（Palazzo Reale）とその庭園：トリノの中心、カステッロ広場に面して建つこの宮殿は、左右対称の美しい姿が特徴です。16世紀から17世紀にかけて、アスカニオ・ヴィトッツィとカルロ・モレッロによって設計され、建設されました。18世紀には現在の形に完成し、裏手にはアンドレ・ル・ノートルが手掛けた広大な庭園が広がります。

マダマ宮殿（Palazzo Madama）：カステッロ広場に位置するこの宮殿は、元々ローマ時代の砦であった場所に、14世紀にアカイヤ家によって建設が開始されました。その後、諸侯の后の宮殿として使用され、1584年にアスカニオ・ヴィトッツィがファサードを設計。1718年にはフィリッポ・ユヴァッラによる拡張工事が行われ、現在の姿となりました。2006年のトリノオリンピックでは、国際オリンピック委員会のラウンジとして使用されました。

カリニャーノ宮殿（Palazzo Carignano）：1679年にグアリーノ・グアリーニによって建設が開始されたこの宮殿は、独特なレンガ造りが特徴です。1831年までサヴォイア家の宮殿として使用され、その後サルデーニャ王国議会の議事堂となりました。現在は国立イタリア統一博物館として一般に公開されています。

ヴァレンティーノ城（Castello del Valentino）：1564年にエマヌエーレ・フィリベルトが購入したこの城は、ポー川を望む場所に位置しています。1641年にカルロ・ディ・カステラモンテによって現在の姿に完成しました。現在はトリノ工科大学の建築学部として使用されています。

リヴォリ城（Castello di Rivoli）：スーザ谷に向かう要衝の地、リヴォリに位置するこの城は、14世紀からサヴォイア家の所有でした。15世紀以降、居住用の宮殿に改築され、ミケランジェロ・ガローヴェによる改築、フィリッポ・ユヴァッラの設計を経て、現在の姿となりました。現在は現代美術館が併設されています。

モンカリエーリ城（Castello di Moncalieri）：モンカリエーリの丘の上に建つこの城は、中世の古城を徐々に拡張する形で発展しました。アンドレア・コスタグータ、アメデオ・ディ・カステラモンテ、カルロ・ディ・カステラモンテなど、多くの建築家が建設に関わっています。

カッチャ宮殿及びストゥピニージ宮殿（Palazzina di Caccia di Stupinigi）：1729年にヴィットリオ・アメデオ2世がフィリッポ・ユヴァッラに設計を依頼した狩猟用宮殿です。ベネデット・アルフィエリらの拡張工事を経て、屋根の上にはフランチェスコ・ラダッテの鹿のモニュメントが設置されています。建物は聖アンデレ十字の形に左右に伸びており、現在は美術品と歴史的家具の博物館として公開されています。

登録基準

サヴォイア王家の王宮群は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作: 建築家たちの創造性と技術力が、これらの建造物に見事に表現されています。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの: サヴォイア家の建築群は、当時の建築技術や都市計画、景観デザインの発展を示す重要な例です。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例: サヴォイア家の王宮群は、リソルジメント期のイタリアの歴史を物語る重要な建造物群です。

(5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例:サヴォイア王家の王宮群は、特定の文化を代表する建造物群として、その価値が認められています。

アクセス

トリノ空港へは、パリ、フランクフルト、ローマなどの主要都市から毎日フライトが就航しています。また、ミラノからは鉄道または高速道路を利用して約2時間でアクセス可能です。

関連項目

スペルガの悲劇：「サヴォイア王家の王宮群」の一つであるスペルガ聖堂で発生した航空事故。

サヴォイア王家の王宮群は、イタリアの歴史と文化、そして建築技術の粋を集めた、まさに歴史的、芸術的な宝物です。これらの壮大な建造物は、訪れる人々に深い感動と歴史への洞察を与えてくれるでしょう。

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