サード・MC8R

サード・MC8R

サード・MC8Rは、サードがル・マン24時間レースのGT1クラスに向けて仕様を特化して開発したレーシングカーです。ベースとなったのはトヨタ・MR2 (SW20)で、その個性を引き出すために多くの改良が施されています。GT1クラスのホモロゲーションに対応するため、特別に製作された一台の「ロードカー」が存在します。MC8Rは、BPRグローバルGTシリーズやFIA-GT選手権にも参戦歴があり、そのパフォーマンスとデザインが注目されました。

車両の概要

外観はSW20型MR2を彷彿とさせながらも、構造は大きく改変されています。キャビン部分のモノコックはそのまま残され、ロールケージによって強化されていますが、前後のオーバーハングはオリジナルとは異なるパイプフレームが採用され、シャシー構成はシルエットフォーミュラのスタイルに近いものです。また、サスペンションは過去にグループCカーで使用されていたスペアパーツに置き換えられています。

エンジンには、数々のGTレースで活躍した3S-GTEではなく、KKK製ツインターボを装備したトヨタの1UZ-FEエンジンが採用されています。このエンジンの開発にはトヨタの協力が得られなかったため、サードが独自に開発を進めたものです。

レースでの成績

1995年

MC8Rは1995年にル・マンに初めて参戦しました。カーナンバーは26で、予選では4分11秒03のタイムを記録し、31番グリッドからスタートしましたが、決勝ではクラッチのトラブルでわずか14周でリタイアしました。吉川とみ子のドライブ予定はあったものの、基準タイムをクリアできず予選落ちしたため、アラン・フェルテとケニー・アチソンの二人だけがレースに参加しました。

同年8月には、鈴鹿1000km耐久レースにも参戦し、カーナンバーは3、ドライバーはアラン・フェルテ、マウロ・マルティニ、ジェフ・クロスノフの3名で、総合26位、クラス10位という結果でレースを終えました。

1996年

1996年には外装や内部を大きく改良し、前年よりも200 kg以上の軽量化を達成しました。シャシー改良の他、ギアボックスをヒューランド製の6速からマーチ製の5速へと変更しています。カーナンバーは46、新たにドライバーとしてアラン・フェルテ、パスカル・ファブレ、マウロ・マルティニが加わり、決勝では256周を走行し、総合24位、クラス15位でフィニッシュしました。

同年の鈴鹿1000km耐久レースでは、予選11番グリッドからスタートするも、6周でリタイアに終わります。

1997年

1997年のル・マンには2台体制で参加しましたが、オリビエ・グルイヤールが予備予選中にマシンの不具合により「オーバーシュート」が発生、34号車、35号車ともに予備予選を通過できませんでした。エンジン出力は前年より100馬力以上向上し、車体重量は1,000 kgを下回る性能を持ちながら、競争にはついていけず苦しむこととなりました。

この年の鈴鹿1000kmでは39号車、46号車の2台体制でスタートしましたが、両車ともにトラブルに見舞われリタイア。MC8Rはこの年をもって姿を消します。

トリビア

MC8Rには多くのスポンサーが参加していましたが、特にNTTドコモや大塚家具などがその名を連ねていました。また、大塚家具がスポンサーとなった39号車は接触事故でカウルが溶けてしまいましたが、46号車は再塗装された後、有明本社ショールームに展示されました。特別に製作されたホモロゲーション車両の一部は、日本国内に個人に売却された記録が存在しますが、後の1997年型ロードカーは保存されることなく破棄されてしまったようです。

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