サーバ型放送

サーバ型放送とは

サーバ型放送とは、デジタル放送において、放送波や通信回線を通じて配信される番組、関連コンテンツ、メタデータを、受信側の家庭用サーバなどの記録装置に蓄積し、これらを活用して高度な視聴体験を提供するサービスです。蓄積型放送とも呼ばれます。この方式により、従来の放送では実現できなかった多様な機能や視聴方法が可能になります。

概要

サーバ型放送の概念は、次世代デジタル放送システムの国際標準策定を目指す「TV Anytime Forum」に日本が参加する過程で、総務省の答申によって具体化されました。2006年には、NHK、民放、家電メーカーなどが参加する「サーバ型放送運用規定作成プロジェクト」によって日本国内の規格が策定されました。標準規格としては、「ARIB STD-B38」と「ARIB TR-B27」が定められています。

主な機能

サーバ型放送には、以下のような様々な機能があります。

ダイジェスト視聴: 番組に付随するメタデータを利用し、蓄積された番組の中から特定のシーンだけを再生できます。例えば、スポーツ中継のハイライトシーンのみを視聴可能です。
マルチシナリオ視聴: 放送番組と連動コンテンツを組み合わせた視聴方法です。教育番組を例にすると、実験映像と同時にテキストや実験器具の使用法をデータ放送や通信回線で提供するといったことが可能です。
番組リクエスト視聴: 通信回線を通じて過去に放送・配信された番組や見逃した番組を視聴できます。これは、いわゆるビデオ・オン・デマンド（VOD）に相当します。
番組自動録画: 番組名、出演者、視聴履歴などのメタデータに基づいて、ユーザの好みに合った番組を自動的に録画できます。
課金機能: ペイ・パー・ビューのような視聴課金や、DVDなどへの記録時の課金が可能です。
視聴制御: 限定受信システム、コピーコントロール機能、再生制御機能などを用いて、不正コピーの防止やCMスキップの制限が可能です。

世界での展開

日本

日本においては、2002年に世界で初めて通信衛星を使用したCS放送「プラットワン」にて、蓄積型双方向放送サービス「ep」が開始されました。しかし、コンテンツの魅力不足や受信端末の高価格、ユーザビリティの低さなどが原因で利用が伸び悩み、2004年にサービスは終了しました。

2004年には、サンテレビの地上デジタル放送で、サーバ型放送の実用化に向けた実証実験が行われました。また、NHKやWOWOWも衛星放送を使ったサーバ型放送サービスを計画しましたが、周波数割り当ての問題から、ブロードバンド回線を利用したVODサービスに転換しました。2012年にはNOTTVが「プッシュキャスト」という蓄積型放送機能を搭載しましたが、2016年にサービスを終了しています。

アメリカ

アメリカでは、マルチメディア放送規格MediaFLOにおいて、「Clipcasting」という名称で一部地域でサービスが開始されました。

課題と今後の展望

サーバ型放送は、従来の放送では不可能だった多様な視聴方法や機能を提供できる可能性を秘めていましたが、日本においては、コンテンツの魅力や端末の使い勝手、ブロードバンド環境の普及などの要因により、普及には至りませんでした。しかし、これらの技術は、現在のVODサービスやパーソナライズされたコンテンツ配信へと繋がっています。

関連項目

TiVo
通信と放送の融合
* マルチメディア放送

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