MediaFLO

MediaFLO（メディアフロー）とは

MediaFLOは、アメリカのクアルコムが開発した携帯端末向けのマルチメディア放送規格、またはその放送サービスを運営していた企業です。国際標準規格であるITU-R勧告BT.1833のMultimedia System Mの一方式として、ISDB-T（ワンセグ）・T-DMB・DVB-Hと共に規格化されました。

概要

MediaFLOは、アメリカ国内での電波の周波数帯域の利用効率向上を目的に開発されました。従来のアナログテレビ放送や地上デジタル放送では、デコードチップの消費電力が大きく、携帯機器への搭載が困難でした。また、アメリカで使用されているATSC規格は信号の多重化が難しく、これらの問題を解決するためにMediaFLOが開発されました。

MediaFLOの「FLO」は、Forward Link Onlyの略で、送信信号が送信所から端末への一方通行であることを意味します。

サービス名称は『FLO TV』で、有料放送を主体としており、番組やチャンネルごとに課金する方式を採用していました。受信信号は暗号化されており、視聴には番組視聴鍵、契約鍵、サービス鍵を携帯電話網などの通信回線を通じて取得する必要がありました。

歴史

2003年頃 - クアルコムがアメリカ国内で700MHz帯の電波利用権を獲得。
2004年 - MediaFLOの運営会社を設立。
2005年12月22日 - 日本での実用化を目指し、クアルコムジャパンとKDDIがメディアフロージャパン企画株式会社を設立。
2007年3月1日 - アメリカのベライゾン・ワイヤレスが『VCAST mobile TV』としてサービスを開始。
2008年5月 - アメリカのAT&Tモビリティがサービスを開始。
2010年9月9日 - 日本の総務省が携帯端末向けマルチメディア放送の方式にISDB-Tmmを選定し、MediaFLOは落選。
2010年10月5日 - クアルコムがFLO TVの端末販売中止を発表。
2010年10月20日 - 2011年3月末でFLO TVサービスを終了することを発表。
2011年3月31日 - FLO TVのサービスが終了。

主な機能

リアルタイム型ストリーミング放送: 最大20チャンネル程度のテレビ放送と、最大10チャンネル程度のラジオ放送。
蓄積型クリップキャスト: 最大40チャンネル程度の蓄積型放送。
IPデータキャスティング: 動画、音声、データ配信、データ放送。
インタラクティブサービス: 通信回線を使用した双方向機能。

技術

周波数帯: アメリカでは716-722MHz（700MHz帯ブロックD）を使用。
中心周波数: 719MHz、占有周波数幅5.55MHz。
変調方式: 直交周波数分割多重方式（OFDM モード2）、OFDMサブキャリアは四位相偏移変調（QPSK）または16値直交振幅変調（QAM）を使用。
ストリーム転送量: 200-250kbit/s。
動画: QVGAサイズ（アナログテレビ放送の1/4）のものをH.264/MPEG-4 AVC 30fpsで符号化。
音声: MPEG4 HE AAC V2で符号化。
限定受信システム: 番組視聴鍵、契約鍵、サービス鍵により多重に暗号化。

各国での状況

日本

日本では、KDDIとクアルコムジャパンの合弁会社であるメディアフロージャパン企画株式会社と、ソフトバンクが設立したモバイルメディア企画株式会社（後にISDB-Tmmへ変更）が中心となって推進していました。しかし、2010年に総務省がISDB-Tmm方式を選定したため、MediaFLOの免許取得は実現しませんでした。

ワンセグとの機能比較

MediaFLOは、ワンセグよりも高画質・高フレームレートな映像を提供できる一方で、有料放送である点や、視聴に通信回線が必須である点などが課題でした。

アメリカ

アメリカでは、2007年春にサービスを開始し、有料放送を月額15ドル程度で提供していました。しかし、2010年時点で契約数は30万人に留まり、2011年3月にサービスを終了しました。

まとめ

MediaFLOは、携帯端末向けのマルチメディア放送規格として開発されましたが、アメリカ以外の国では普及せず、サービスは終了しました。技術的には優れた点も多くありましたが、有料放送であることや、通信回線に依存するなどの課題がありました。

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