サーブ 37 ビゲン

サーブ 37 ビゲン (SAAB 37 Viggen)

サーブ 37 ビゲンは、1970年から1990年にかけてスウェーデンのサーブ社により製造され、スウェーデン空軍で運用された戦闘機です。全体としては、対地攻撃任務のAJ 37、偵察任務のSF 37、SH 37、戦闘任務主体型のJA 37などの派生モデルが存在します。その愛称「Viggen」は、北欧神話におけるトールのハンマーが鳴らす雷の音を意味する「thunderbolt」に由来します。別名として、カタカナ表記で「ヴィッゲン」とも呼ばれます。

開発背景

ビゲンの開発は、1952年から1957年にかけて行われ、ドラケンの進化形としての役割を担うことを目的としていました。スウェーデンの戦略としては、核攻撃による影響を受けやすい主要な航空基地の機能が喪失しても、非正規な滑走路から離陸できる能力を持つ堅牢な単発戦闘機の開発が求められました。そのため、高速道路のような環境からの離着陸が可能なSTOL性能が重要視されました。

1964年に試作機の製造が始まり、1967年には初飛行が成功しました。ドラケンは初めて超音速迎撃機にSTOL特性を追加した試みでしたが、懸念も多く、その改良に向けた要望が高まりました。サーブ社は、デルタ翼にカナードを組み合わせる新しいデザインアプローチを採用し、これにより飛行の安定性や運動能力を向上させました。この設計は、ビゲン以降の多くの戦闘機に影響を与えました。

主要特性

ビゲンは、強力なターボファンエンジンRM8AおよびRM8Bを装備し、低バイパス比の設計により高出力と安定した飛行性能を実現しました。また、約500メートルで減速できるスラストリバーサー（逆噴射装置）を搭載しており、これにより安全な着陸が可能となっています。

派生型と運用

最初の運用部隊である第7航空団は1972年に編成され、AJ 37を導入しました。その後、SF 37やSH 37といった他の派生型も運用されました。特に、JA 37は迎撃任務に特化したものであり、1980年から1990年にかけて149機が引き渡されました。

ビゲンは長い間スウェーデン空軍の主力戦闘機であり続け、2007年6月26日に正式に退役しました。これに伴い、後継機としてJAS 39 グリペンが導入されました。

輸出の失敗

ビゲンは、その優れた性能にも関わらず国際市場での輸出が実現しませんでした。改良型の『Saab 37E』は多くの国からの関心を集めましたが、スウェーデン政府の厳しい武器輸出規制や、アメリカからの外交的圧力の影響を受け、国外に売り込むことができませんでした。特に、日本やインドなどからの要請があったものの、アメリカのエンジン供給制限が障害となり、インドではジャギュアが代替として選ばれる結果となりました。

ビゲンの兵器としては、30mm機関砲、各種ミサイルや爆弾を装備し、多様な任務に対応する能力がありました。特に航空自衛隊もその戦闘能力に注目しましたが、いくつかの懸念から採用には至りませんでした。

諸元

• - 乗員: 1名
• - 全長: 16.4m
• - 最大離陸重量: 20,450kg
• - 最大速度: 2,231km/h
• - 武装: エリコンKCA 30mm機関砲、各種ミサイル

ビゲンは、現代の戦闘機の中では非常にユニークな設計と性能を持つ機体として、航空機ファンのみならず、多くのエンジニアからも注目されています。

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