サーブ・9-5

サーブ 9-5：スウェーデンが生んだ個性派高級車の軌跡

サーブ9-5は、スウェーデンの自動車メーカー、サーブが1997年から2011年にかけて製造・販売した乗用車です。ゼネラルモーターズ傘下時代を経て、2世代にわたるモデルチェンジを繰り返しながら、独特のデザインと走りを追求したモデルとして人気を博しました。本稿では、9-5の歴史、特徴、日本での展開について詳しく解説します。

9-5（初代 YS3E）：1997年～2010年

1987年デビューのサーブ9000の後継として、1997年秋に発表されました。日本とアメリカ合衆国市場への導入は1998年から開始。オペルとの共通プラットフォームを採用し、エンジンも一部で共通化されました。ボディタイプは4ドアセダンとステーションワゴンの「エステート」の2種類を展開。

エンジンは、2.0L、2.3Lの直列4気筒ターボ、3.0LのV型6気筒ガソリンエンジンに加え、いすゞ製のV型6気筒ディーゼルエンジンもラインアップ。グレードや年式により出力などが異なりました。

装備面では、全グレードに前席シートヒーターを標準装備。さらに、手袋をしたままでも操作しやすいドアハンドルや操作系、大容量のフロントウォッシャータンクを採用するなど、実用性も重視した設計となっています。オプション設定ながら、ヘッドランプワイパーも用意されました。安全装備も充実しており、サイドエアバッグ、ABS、ESCなどを標準またはオプションで提供。トランクスルーやマルチリンガル対応のインフォメーションシステム、トリップコンピュータも標準装備。特徴的なのは、サーブ伝統のセンターコンソールに配置されたイグニッションキーと、当時としては先進的なフィンタイプのルーフアンテナです。

日本市場ではヤナセが輸入を担当（のちにGMアジア・パシフィック・ジャパンに移行）。2.3L直列4気筒ターボと3.0L V型6気筒ガソリンエンジン搭載モデルが販売されました。前席シートヒーター、サイドエアバッグ、ABS、ESCは標準装備。2002年と2006年にはマイナーチェンジを行い、フロントグリルやリアランプのデザイン変更、グレード体系の見直し（「リニア」「アーク」「ヴェクター」「エアロ」）を行いました。2009年にはセダンモデルの輸入を終了し、エステートの2.3Lターボモデルのみの販売となりました。2009年12月には、北京汽車への知的財産権等の売却が発表されています。

9-5（2代目 YS3G）：2010年～2011年

2009年のフランクフルトモーターショーで試作モデルが公開されました。初代と同様にゼネラルモーターズのプラットフォームを使用するものの、全長5mを超える大型化が図られました。エンジンは1.6L、1.8L、2.0Lの直列4気筒ターボ、2.8LのV型6気筒を用意。トランスミッションは6速ATと6速MTを設定。

2010年の発売発表後、ゼネラルモーターズの経営危機、スパイカー・カーズへの経営権譲渡を経て生産が開始されました。ボディタイプは4ドアセダンのみ。ステーションワゴンタイプの「スポーツコンビ」はパイロットモデルが製作されたものの、2011年末のサーブ経営破綻により量産には至りませんでした。

日本市場では2011年3月18日に発売。2.0L直列4気筒ターボと2.8L V型6気筒ターボを搭載した「ヴェクター」（FFおよびXWD）と「エアロ」（XWDのみ）の2グレード3モデルが設定され、9-5としては初めてXWD（全輪駆動）モデルが導入されました。しかし、同年年末のサーブ経営破綻により販売は終了しました。

まとめ

サーブ9-5は、個性的なデザインと高い走行性能を両立したモデルとして、サーブの歴史において重要な位置を占める車種です。ゼネラルモーターズ傘下時代、そして独立後の短命な期間においても、独自の道を歩み続けました。その魅力は、今日でも多くのファンを魅了し続けています。

もう一度検索