サー・ジョン・オールドカースル

『サー・ジョン・オールドカースル』について

『サー・ジョン・オールドカースル』は、14世紀から15世紀にかけて実在した人物、ジョン・オールドカースルを題材にした歴史劇です。彼はロラード派の信奉者であり、反逆者として処刑されましたが、当時のプロテスタントからは殉教者と見なされていました。この戯曲は、彼の生涯を舞台化し、宗教的、政治的な側面から彼の人物像に迫ります。

成立と作者

この戯曲は、1600年に匿名で出版されました。出版者はトーマス・ペイヴィア、印刷はヴァレンタイン・シムズによるものです。1619年には第2版が出版され、作者はウィリアム・シェイクスピアとされましたが、実際にはアンソニー・マンデイ、マイケル・ドレイトン、リチャード・ハサウェイ、ロバート・ウィルソンの共作であるという説が有力です。フィリップ・ヘンズローの日記には、これらの作家に報酬が支払われた記録が残っています。特に、ドレイトンは第二部の執筆に関わったとされていますが、その第二部は現存していません。そのため、この劇はしばしば『サー・ジョン・オールドカースル 第1部』と呼ばれることがあります。

1664年、シェイクスピアの「サード・フォリオ」第二刷に追加された七つの戯曲の中に、この劇も含まれました。これにより、シェイクスピア作品として認識されることになりますが、実際には彼の作品ではないと考えられています。

モデルとなった人物

サー・ジョン・オールドカースルは、実在の人物であり、兵士であり、ロラード派の信奉者でした。1417年に異端と反逆の罪で処刑されました。彼の生涯は、ジョン・フォックスの『殉教者伝』にも詳しく記述されており、テューダー朝のプロテスタント改革に影響を与えたとされています。また、エリザベス朝初期の歴史劇『The Famous Victories of Henry V』にも登場しており、シェイクスピアが『ヘンリー四世』や『ヘンリー五世』を書く上での資料の一つになったと考えられています。

あらすじ

この劇は、観客の好みや当時の検閲を考慮し、オールドカースルの物語を巧みに描いています。オールドカースルは、政治的な反逆者としてではなく、宗教的な反対者として描かれています。彼はローマ・カトリック教会には敵対的でしたが、ヘンリー五世には忠誠を誓っていました。劇中では、オールドカースルを陥れようとするロチェスター司教や、他の反逆者との関わりも描かれていますが、彼は彼らとは距離を置いています。

劇中の喜劇的な役割を担うのは、フォルスタッフを模倣したサー・ジョン・ロサムです。彼は変装したヘンリー五世と交流します。劇の後半では、オールドカースルとその妻がロチェスター司教に追われる様子が描かれ、最終的にはオールドカースルが投獄を免れ、一時的にポジティブな結末を迎えます。ただし、もし第二部が存在していたとすれば、歴史的事実に基づき、オールドカースルの悲惨な最期が描かれていた可能性が高いです。

参考文献

Dominik, Mark. A Shakespearean Anomaly: Shakespeare's Hand in "Sir John Oldcastle." Beaverton, OR, Alioth Press, 1991.
Halliday, F. E. A Shakespeare Companion 1564–1964. Baltimore, Penguin, 1964.
Scoufos, Alice-Lyle. Shakespeare's Typological Satire: A Study of the Falstaff/Oldcastle Problem. Athens, OH, Ohio University Press, 1979.

外部リンク

Sir John Oldcastle eText at Project Gutenberg

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