ザアカイ

ザアカイは、新約聖書のルカによる福音書19章に登場する、収税人として知られる人物です。その名前はヘブライ語の「ゼカリヤ」の短縮形であり、「義人」または「きよい人」という意味を持っています。彼は、今日のイスラエルに位置するエリコの町で、取税人の頭として働いていました。

当時の収税人は、その強欲な取り立てによって人々に「罪深い男」と見なされていました。ザアカイもまた、その富裕さから人々からの評判は芳しくありませんでした。しかし、彼の人生はイエス・キリストとの出会いによって大きく変わることになります。

キリストがエリコの町を訪れた際、ザアカイはイエスを見ようとしますが、背が低いためによく見ることができませんでした。そこで、彼はイチジクの木に登り、イエスが通りかかるのを待ちました。イエスはザアカイに気づき、彼に声をかけました。「ザアカイ、急いで降りてきなさい。今日、あなたの家に泊まることにする」。ザアカイは喜んでイエスを迎えました。

イエスとの出会いは、ザアカイの心に大きな変化をもたらしました。彼は、自身の罪を悔い改め、イエスに対してこう告白しました。「主よ、ご覧ください。私の財産の半分を貧しい人々に施します。また、もしだれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します」。ザアカイの言葉と行動は、イエスの教えに触れ、真の悔い改めへと至った証と言えるでしょう。

ザアカイの変革は、富の扱い方、正義、そして他者への愛について、私たちに重要な教訓を与えてくれます。彼は不正な方法で得た富を返済し、貧しい人々に施しをすることで、真の悔い改めを示しました。この出来事は、イエスの教えが、いかなる状況にいる人間でも変えうるという希望を表しています。

正教会では、ザアカイはイエスの復活後、使徒パウロ（パウェル）に協力し、伝道活動に携わったとされています。その後、カイサリア（ケサリア）の主教となり、その地で平安に永眠したと伝えられています。ザアカイは、その生涯を通してキリストの弟子として模範を示し、聖人として記憶されるようになりました。

ザアカイの物語は、私たちに内なる変革と悔い改めの重要性を教えてくれます。彼はかつて罪人として見なされていたにもかかわらず、イエス・キリストとの出会いを通じて、全く新しい人生を歩み始めました。彼の話は、いかなる人も救いの機会が与えられているという、キリスト教の根本的なメッセージを体現しています。

参考文献

• - 『新聖書辞典』いのちのことば社、1985年

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