ザイドリッツ (重巡洋艦)

ザイドリッツ：幻のドイツ空母

ザイドリッツは、ドイツ海軍が第二次世界大戦前に計画した巡洋艦です。当初は軽巡洋艦として建造が開始されましたが、後に重巡洋艦へと設計変更され、さらに航空母艦への改造計画が持ち上がるなど、その生涯は非常に複雑なものでした。

建造の経緯

1935年、ドイツはイギリスとの間で英独海軍協定を締結し、5万トンの巡洋艦建造枠を獲得しました。これにより、ドイツ海軍は5隻の重巡洋艦の建造が可能となりました。しかし、この動きは列強諸国に衝撃を与え、ドイツ海軍は巡洋艦の増強をさらに推し進めることになります。

Z計画に基づき、ドイツ海軍は3隻の重巡洋艦の建造を開始しました。その後、6インチ砲を搭載した1万トン級の軽巡洋艦2隻（ザイドリッツとリュッツオウ）の建造も計画されました。これらはアドミラル・ヒッパー級重巡の軽巡洋艦バージョンであり、6インチ砲12門（三連装砲塔4基）を搭載する予定でした。ザイドリッツは1936年12月29日に起工されましたが、1938年12月、ドイツは建造中の2隻の軽巡洋艦を8インチ砲搭載の重巡洋艦として建造したいと申し入れ、イギリスもこれを了承しました。

1939年1月19日、ザイドリッツは進水しました。この時、先代の巡洋戦艦「ザイドリッツ」の将校であったリチャード・フェルスター提督が演説を行いました。

第二次世界大戦と航空母艦への改造

しかし、同年9月初頭の第二次世界大戦開戦時には、ザイドリッツの完成度はわずか23%に過ぎませんでした。ソ連は同型の未成艦「リュッツオウ」と共に購入を希望しましたが、ドイツ側はこれを拒否しました。その後、潜水艦の建造に重点が移ったため、ザイドリッツの工事は遅滞しました。

1942年8月、ザイドリッツは完成度90%の時点で、軽空母への改造が決定しました。この改造計画は「ヴェーザー1」(Weser-1)と名付けられましたが、艦名自体が変更されたわけではありません。上部構造物の撤去などの改造工事が行われましたが、物資の欠乏のため、1943年1月に工事は中止されました。

最期

その後、ザイドリッツはケーニヒスベルクに曳航され、そこでソ連軍の侵攻に備えて1945年1月29日に自沈しました。1946年、ソビエト海軍によって浮揚されましたが、「タリン」のための部品取りが計画されたものの実行されず、翌1947年に解体されました。

ザイドリッツは、その計画と建造、改造と、激動の時代に翻弄された悲劇的な艦艇と言えるでしょう。完成することなく、その生涯を終えたものの、その存在は、当時のドイツ海軍の野心と技術力を示すものとして、歴史に刻まれています。

関連項目

最上型重巡洋艦：竣工時は6インチ砲塔装備の軽巡洋艦（二等巡洋艦）でしたが、後に8インチ砲塔を搭載して重巡洋艦となった艦です。ザイドリッツと同じく、軽巡洋艦から重巡洋艦へと変貌を遂げたという点で、比較対象となります。
ド・グラース (防空巡洋艦)：フランス海軍の軽巡洋艦で、ドイツ軍に鹵獲されドイツ空母IIとして改造されましたが、未完成に終わりました。ザイドリッツ同様、航空母艦への改造計画が頓挫したという点で、共通点があります。

参考文献

* ゴードン・ウィリアムソン、手島尚（訳）『ドイツ海軍の重巡洋艦　1939-1945』大日本絵画、2006年、ISBN 4-499-22909-X

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