ザクセン選帝侯の双剣座

ザクセン選帝侯の双剣座

ザクセン選帝侯の双剣座（Gladii Electorales Saxonici）は、ドイツの天文学者であり、暦算家でもあるゴットフリート・キルヒによって考案された星座の一つです。これは現在では使用されていない星座ですが、その名称は「ザクセン選帝侯の剣」を意味しています。この星座は、ザクセン選帝侯ヨハン・ゲオルク3世を讃えるものであり、1684年に発表された『ライプツィヒ学術論叢』（Acta Eruditorum）の中で紹介されました。この際、著名な天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスが考案した「ソビエスキの盾」（現在のたて座）と共に紹介されています。

星座の位置と構成

ザクセン選帝侯の双剣座は、へび座の頭部とおとめ座の間に位置し、アークトゥルス、てんびん座のβ星、おとめ座のμ星とτ星によって囲まれた領域に描かれています。この星座は、ザクセン選帝侯の紋章に見られる交差した双剣を模しており、構成する星にはヨハン・ゲオルク3世の名前を基にしたアルファベットが含まれています。このように、最も顕著に表現されたのは、彼の名前を示すJ、o、h、a、n、G、e、r、gという文字の組み合わせです。

この星座は、9つの特定の恒星から構成されており、それぞれの星は以下のように識別されています:

• - J星: おとめ座CU星（5等星）
• - o星: おとめ座109番星（4等星）
• - h星: おとめ座110番星（4等星）
• - a星: へび座5番星（5等星）
• - n星: へび座10番星（5等星）
• - G星: HD 126129（5等星）
• - e星: HD 126248（5等星）
• - r星: てんびん座11番星（5等星）
• - g星: てんびん座16番星（4等星）

双剣座の影響と後続の星座

キルヒを含むその後の天文学者の中で、ザクセン選帝侯の双剣座を引き続き認識し、研究した者はいなかったようです。特にヨハン・ボーデなどの天文学者は、この地域に存在した星座を周囲のうしかい座、おとめ座、へび座、てんびん座に分割して論じました。

また、キルヒは彼以外にもブランデンブルク選帝侯フリードリヒ3世を称えた「ブランデンブルクの王笏座」（Sceptrum Brandenburgicum）や、神聖ローマ皇帝レオポルト1世を讃えた「帝国宝珠座」（Pōmum Imperiāle）なども考案しましたが、1922年に国際天文学連合が現行の88星座を制定する際には、これら全てが除外されることとなりました。

これにより、ザクセン選帝侯の双剣座は、天文学の歴史の中で名前が消えた星座となったのです。現在では、天文学の文献の中でその名を目にすることはほとんどありませんが、かつてはその存在が讃えられたことを知っておくことは、歴史の一端を理解するための重要な手掛かりとなるでしょう。

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