ザクセン＝ヴィッテンベルク

ザクセン＝ヴィッテンベルク公領：歴史と変遷

ザクセン＝ヴィッテンベルク公領は、神聖ローマ帝国における重要な公爵領の一つであり、その歴史は部族公国時代のザクセン公国の崩壊後に遡ります。特に1356年以降はザクセン選帝侯領として知られ、帝国の政治において重要な役割を担いました。

アスカーニエン家の台頭とザクセン公位

アスカーニエン家（アスカン家）の祖であるバレンシュテット伯オットーが1122年にザクセン公の称号を得たことが、この地域の歴史の始まりと言えるでしょう。彼の息子、アルブレヒト熊伯は1134年にロタール3世からザクセンのノルトマルク辺境伯領を授けられ、1138年にはコンラート3世によってザクセン公国を与えられました。しかし、貴族たちの支持を得られず、1142年にハインリヒ獅子公に公位を譲ることになります。その後、アルブレヒト熊伯はブランデンブルク辺境伯領を創設し、その勢力を拡大しました。

公国の分割とザクセン＝ヴィッテンベルクの成立

1180年、ハインリヒ獅子公がフリードリヒ1世によって廃位されると、広大なザクセン公国は多くの諸侯によって分割されました。この分割により、オストファーレンを中心とする地域が「ザクセン公国」の名を引き継ぎ、アルブレヒト熊伯の息子ベルンハルト3世に与えられました。ベルンハルト3世の死後、その息子たちは領土を分割相続し、アルブレヒト1世がエルベ川東岸のヴィッテンベルクとその周辺地域、ラウエンブルク、エルベ川河口のラント・ハーデルンを相続し、ザクセン公の称号を得ました。

共同統治と領土の分割

アルブレヒト1世の死後、その息子であるヨハン1世とアルブレヒト2世は共同統治を行いましたが、1269年以降、段階的に領土を分割していきました。1282年には、ヨハン1世が自分の息子たちに公位を譲り、アルブレヒト2世との共同統治が続きました。1296年には正式な分割が行われ、ヨハンの息子たちがザクセン＝ラウエンブルク公国を創設し、アルブレヒト2世はヴィッテンベルクを手に入れ、ザクセン＝ヴィッテンベルク公を称しました。

選帝侯位を巡る争いと金印勅書

13世紀末から14世紀にかけて、ザクセン＝ラウエンブルクとザクセン＝ヴィッテンベルクはローマ王選挙における選帝侯としての投票権を争いました。1314年の国王選挙では、両家が異なる候補を支持し、対立が表面化しました。しかし、1356年にカール4世が発布した金印勅書により、ザクセン＝ヴィッテンベルク公がザクセン選帝侯として正式に認められ、ザクセン＝ラウエンブルクに対する優位を確立しました。これにより、ザクセン＝ヴィッテンベルクはザクセン選帝侯領として、その後の歴史を歩むことになります。

アスカーニエン家の断絶とヴェッティン家の台頭

1422年、選帝侯アルブレヒト3世の死により、ザクセン＝ヴィッテンベルク系アスカーニエン家が断絶しました。最近親の男系男子であるザクセン＝ラウエンブルク公エーリヒ5世が相続を主張しましたが、皇帝ジギスムントはヴェッティン家のマイセン辺境伯フリードリヒ4世を次のザクセン選帝侯に任命しました。これにより、ザクセンの支配はヴェッティン家に移り、新たな時代が始まりました。

その後の変遷

1423年にヴェッティン家がザクセン選帝侯位を獲得してからは、ザクセンと呼ばれる地域は部族公国期とは地理的に大きく異なりました。ザクセン＝ヴィッテンベルク公領はザクセン選帝侯領の一部となり、その後も領主家系の異動がありましたが、1547年にアルベルティン系ヴェッティン家が最終的に獲得しました。

この地域は、神聖ローマ帝国の崩壊、ナポレオン戦争、ドイツ統一といった激動の時代を経て、現在のドイツ連邦共和国の一部となっています。その歴史は、領土、権力、そして人々の生活に深く影響を与え続けています。

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