ザッツ・オール・ライト

ザッツ・オール・ライト (That's All Right)

「ザッツ・オール・ライト」は、ブルース歌手アーサー・クルーダップが1946年に書いた楽曲で、エルヴィス・プレスリーが1954年にカバーしたことで世界的に有名になった楽曲です。プレスリーのバージョンは、サン・レコードからリリースされ、その後のロックンロールの隆盛を象徴する一曲となりました。

アーサー・クルーダップによるオリジナル版

アーサー・クルーダップは、1946年9月6日にシカゴでこの曲を初めて録音しました。歌詞の一部は、ブラインド・レモン・ジェファーソンが1926年に録音した伝統的なブルースの歌詞を引用しています。クルーダップのバージョンは、RCAビクターからリリースされましたが、当時としては大きなヒットとはなりませんでした。また、クルーダップは同セッションで歌詞を少し変えた「I Don't Know It」という曲も録音しています。1949年には、「ザッツ・オール・ライト・ママ」というタイトルで45回転シングルとして再リリースされています。

エルヴィス・プレスリーによるカバー

誕生秘話

エルヴィス・プレスリーがサン・レコードを訪れたのは1953年の夏でした。当初は母親へのプレゼントとしてアセテート盤を録音するために訪れました。受付で「どんな歌が歌えるのか？」と聞かれたプレスリーは「なんでも歌えます」と答えたそうです。この時録音された曲はプレスリー自身が「ひどい」と評する出来だったそうですが、受付係のマリオン・キースカーはプレスリーの才能に何かを感じ「バラードが上手い青年」というメモを残したそうです。

1954年1月には2枚目のアセテート盤を録音し、この時にサン・レコードのオーナーであるサム・フィリップスと出会っています。その後、サム・フィリップスは、デモテープを歌った歌手が見つからず、マリオンの提案でプレスリーに連絡をとります。1954年6月26日にスタジオに呼ばれたプレスリーは「ウィザウト・ユー」などを歌いますが、なかなかうまくいきませんでした。しかし、サムはプレスリーの可能性を感じ、ギタリストのスコティ・ムーアを紹介しました。

7月4日にオーディションを受け、7月5日にプレスリー、スコティ、ビル・ブラックの3人でセッションが行われました。休憩中、プレスリーがふざけてギターを弾きながら歌い出したのが「ザッツ・オール・ライト」でした。その場にいたサム・フィリップスがその演奏に興味を持ち、録音したものがシングルとしてリリースされることになりました。

リリースと反響

7月19日にリリースされたプレスリーの「ザッツ・オール・ライト」は、メンフィスのチャートで3位まで上昇しました。ラジオ局でオンエアされると、リスナーから大きな反響があり、電話や電報が殺到しました。当初、プレスリーが黒人歌手ではないかと疑ったリスナーもいましたが、放送を通じて、白人であることが明らかにされました。

プレスリーは、後に「目標があったとすれば、アーサー・クルーダップのようになりたいと思っていた」と語っています。1949年にクルーダップの演奏を見たことが、大きな影響を与えたそうです。

2004年の再発

2004年7月には、イギリスでマキシシングルとして再発売され、全英シングルチャートで3位を記録するなど、各国でヒットしました。

その他のアーティストによる演奏

ビートルズもこの曲を演奏しており、1963年7月2日にBBCの番組で放送されました。この音源は、1994年に発売されたアルバム『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』に収録されています。

まとめ

「ザッツ・オール・ライト」は、ブルースとカントリーを融合させた画期的なサウンドを持ち、ロックンロールの誕生を告げた重要な楽曲です。アーサー・クルーダップのオリジナル版、そしてエルヴィス・プレスリーのカバー版ともに、音楽史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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