ブラインド・レモン・ジェファーソン

ブラインド・レモン・ジェファーソン：戦前ブルースの巨匠とその謎めいた生涯

ブラインド・レモン・ジェファーソン (1893年9月24日 - 1929年12月19日) は、20世紀初頭のアメリカ合衆国で活躍したブルース歌手です。類まれな才能で戦前ブルース、特にカントリー・ブルースの代表格として知られ、ライトニン・ホプキンズやT-ボーン・ウォーカーといった後進のアーティストたちに大きな影響を与えました。彼の音楽は、時代を超えて愛され続けています。

不明な点の多い生涯

ジェファーソンの生涯については、残念ながら多くの謎が残されています。生年月日ですら、複数の説が存在します。かつては1897年7月生まれという説が広く信じられていましたが、彼自身の徴兵記録には1894年生まれと記載されていました。しかし、1900年の国勢調査記録に1893年生まれとの記述が見つかったことで、現在では1893年生まれ説が最も有力視されています。

テキサス州カウチマンでアレックスとクラリーサ・ジェファーソンの7番目の子として生まれたジェファーソンは、生まれつき盲目でした。10代でギターを始め、地元のピクニックやパーティーなどで演奏するようになります。1917年にはダラスに移住し、後にブルース界の巨匠となるレッドベリーと出会いました。レッドベリーはジェファーソンから強い影響を受けたと言われ、彼の音楽にもその片鱗が見て取れます。

1920年代前半には結婚し、子供にも恵まれました。しかし、彼は南部各地を旅しながら演奏活動を続けました。転機となったのは1925年、テキサス州でのデモ録音です。この録音がきっかけとなり、翌年にはイリノイ州シカゴのパラマウント・レコードで初のレコーディングを行いました。ただし、この時はゴスペルを歌い、「ディーコンL.J.ベイツ」という変名を使用していました。

1926年3月、2回目のレコーディングでようやく自身の名前でブルースを演奏。「Dry Southern Blues」など4曲を収録しました。その後、1929年までの約4年間で100曲以上の楽曲をレコーディングし、「Matchbox Blues」、「See That My Grave Is Kept Clean」などは彼の代表作として広く知られるようになりました。「See That My Grave Is Kept Clean」はボブ・ディランがデビューアルバムでカバーしたことでも有名です。また、「Matchbox Blues」はカール・パーキンスの「Matchbox」の原型となった楽曲としても知られています。

シカゴでのレコーディングのため、ジェファーソンは故郷テキサスを離れることも多くなりましたが、地元への帰郷や南部各地での巡業も継続しました。しかし、順風満帆だった彼の音楽活動は、1929年12月に突然終わりを迎えます。シカゴで急死したジェファーソンは、嵐の中で遺体となって発見されました。死因については記録がなく、正確な死亡日も不明です。毒殺説、交通事故説、寒さによる心臓発作説など、様々な憶測が飛び交っていますが、いずれも噂の域を出ません。彼の突然の死は、多くの謎と悲しみを後世に残しました。

音楽的遺産

ジェファーソンの音楽は、彼の生涯と同じくらい複雑で奥深い魅力を持っています。彼の奏でるブルースは、悲しみと喜び、希望と絶望が複雑に絡み合い、聴く者の心を深く揺さぶります。彼の奏でた音色は、今もなお多くのブルース・ミュージシャンに影響を与え続け、ブルースの歴史に重要な足跡を残しています。彼の音楽は、彼の生涯と同様に、謎めいた魅力に満ちた、永遠の遺産として語り継がれていくでしょう。

ディスコグラフィー（抜粋）

1985年 King of the Country Blues (Yazoo)
1991年 The Complete Recorded Works (Document)

もう一度検索