ザムエル・シャイト

ザムエル・シャイト（1587年11月3日受洗 - 1653年3月24日）は、ドイツ初期バロックを代表する作曲家、オルガン奏者であり、ハインリヒ・シュッツ、ヨハン・ヘルマン・シャインと並び、「ドイツバロックの3S」の一人として知られています。

生涯

シャイトはハレ・アン・デア・ザーレで生まれ、幼少期から音楽の才能を開花させました。地元の教育を受けた後、アムステルダムに留学し、当時著名な作曲家であったスウェーリンクに師事しました。スウェーリンクの指導はシャイトの音楽スタイルに大きな影響を与え、彼の音楽的発展の礎となりました。

ハレに戻ったシャイトは、宮廷オルガン奏者として活動を始め、後にブランデンブルク辺境伯の宮廷楽長に就任しました。当時のドイツは三十年戦争の戦禍に見舞われていましたが、シャイトは他の多くの作曲家とは異なり、戦火を避けて国外へ逃れることなくドイツに留まりました。戦時中は音楽活動が困難な状況でしたが、教師としての仕事や作曲活動を細々と続けながら、苦難の時代を生き抜きました。戦後、秩序が回復すると、再び宮廷楽長としての地位を取り戻し、音楽活動を再開しました。

音楽様式と作品

シャイトは、ドイツバロック期におけるオルガン音楽の作曲家として、国際的な名声を確立した最初の人物です。宗教改革によって確立された北ドイツ様式の最盛期の作曲家の一人でもあります。南ドイツやヨーロッパの他の地域では、ローマの影響が強く、音楽もイタリア様式のものが主流でしたが、プロテスタント地域はローマの影響から比較的自由であったため、独自の音楽様式を発展させることができました。シャイトの音楽は、 이러한背景のもとで生まれた、北ドイツのプロテスタント音楽の代表的な例と言えるでしょう。

シャイトの作品は、大きく器楽曲と宗教声楽曲の2つに分類できます。器楽曲の多くは鍵盤楽器のための作品であり、特にオルガン曲が豊富です。宗教声楽曲は、無伴奏のものから、通奏低音や他の楽器を伴うものまで様々です。彼のオルガン曲は、当時は非常に人気がありましたが、後世のバッハの音楽の陰に隠れてしまう傾向があります。しかし、シャイトのオルガン曲は、バッハ以前のドイツオルガン音楽を知る上で重要な作品群です。

シャイトは、コラール前奏曲を数多く作曲しており、その中で定旋律変奏の技法を頻繁に用いました。定旋律変奏とは、コラールの各フレーズを異なるリズムの主題として扱い、曲がクライマックスに向けて進行するにつれて、各変奏が徐々に技巧的になっていくという技法です。コラール前奏曲以外にも、フーガ、舞曲組曲（グラウンド・バスを伴う循環形式によるものも含む）、ファンタジアなど、多彩なオルガン作品を作曲しています。

また、シャイトは宗教声楽曲や世俗声楽曲も数多く作曲しており、その多くが現存しています。これらの作品は、当時のドイツ音楽の多様性を示す貴重な資料となっています。

参考文献

Manfred Bukofzer, Music in the Baroque Era. New York, W.W. Norton & Co., 1947. ISBN 0393097455
Article "Samuel Scheidt," in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, ed. Stanley Sadie. 20 vol. London, Macmillan Publishers Ltd., 1980. ISBN 1561591742

外部リンク

* ザムエル・シャイトの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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