ザ・シャーロック・ホームズ

『ザ・シャーロック・ホームズ』は、ロンドンのチャリング・クロス駅とトラファルガー広場に近いノーサンバーランド・ストリートにある、シャーロック・ホームズをテーマにしたパブです。ヴィクトリア朝時代の雰囲気漂う店内には、ホームズにまつわる数々の貴重な品々が展示されています。

このパブの歴史は、1951年のフェスティバル・オブ・ブリテンに遡ります。当時、アビー・ナショナル社が中心となり、多くのホームズファンが協力して、ホームズ関連の展示物が制作されました。その展示物は、ベイカー・ストリート221B（ホームズの住居として知られる住所）を模したセットや、ホームズが実際に使用したとされる品々など、非常に充実した内容でした。

実は、このパブの建物は、かつて『ノーサンバーランド・アームズ』という名の小さなホテルでした。アーサー・コナン・ドイルの小説『独身の貴族』にも登場し、ホームズとワトソンがしばしば訪れた場所として知られています。小説内では、ノーサンバーランド大通り25番地のホテルの隣にトルコ風呂があり、ホームズとワトソンはそこも利用していたと描写されています。現在でも、男性用浴室の背後にある通路から、隣接していた女性用トルコ風呂の入口跡を見ることができるそうです。また、『バスカヴィル家の犬』にも、この建物がノーサンバーランドホテルとして登場するとの推測もあります。

1957年12月、ノーサンバーランド・アームズは改装され、『ザ・シャーロック・ホームズ』として生まれ変わりました。オーナーであるウィットブレッド社は、フェスティバル・オブ・ブリテンで展示されたホームズコレクションを全て買い取り、ロンドンの中心部にテーマパブを設立するという計画を実行しました。

パブの内部は、後期ヴィクトリア朝様式を忠実に再現されています。屋上庭園、1階のレストラン、そして2階には、ホームズのアパートを模したコーナーが再現されています。細部までこだわった作りは、訪れる人をホームズの世界へと誘います。バーには、劇場のポスター、ワトソン博士の拳銃、政治漫画、そして『バスカヴィル家の犬』の犬の頭のはく製など、様々な展示物が並んでいます。

地下にあるバーの展示は、年々充実し続けています。ホームズとワトソンを演じた俳優の写真などが加わり、今では貴重なコレクションとなっています。このコレクションは、ロンドン・シャーロック・ホームズ協会によって管理、維持されており、ホームズファンにとってかけがえのないものです。現在では、グリーン・キング社が運営しています。

『ザ・シャーロック・ホームズ』は、単なるパブではありません。アーサー・コナン・ドイルが生み出した名探偵の世界観を体感できる、まさに聖地と言える場所です。ロンドンを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。シャーロック・ホームズの世界に浸り、忘れられないひとときを過ごせることでしょう。

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