ザ・ビートルズ1967年〜1970年

ザ・ビートルズ1967年～1970年：青盤の軌跡

1973年4月2日、ビートルズの代表曲を網羅した2枚組アルバム『ザ・ビートルズ1967年～1970年』（通称：青盤）が発売されました。1966年以前の楽曲を集めた『ザ・ビートルズ1962年～1966年』（赤盤）と同時リリースされたこのアルバムは、その後の数々の再リリースを経て、現在も世界中で愛され続けています。

誕生の背景：海賊盤との闘い

青盤の誕生は、1973年1月にアメリカで発売された海賊盤『AΩ（ビートルズ・アルファ・オメガ）』が大きな影響を与えています。この海賊盤は公式盤と偽って宣伝され、高音質でビートルズの楽曲に加えソロ作品も収録、爆発的な人気を博しました。この事態に危機感を抱いたキャピタル・レコードと当時のマネージャー、アラン・クラインは、対抗策として公式ベストアルバムの制作を決定。クラインはジョージ・ハリスンを説得し、訴訟とアルバム制作の両方を進めることになります。

選曲作業は、当初ハリスンとクラインが行ったとされていましたが、実際にはクラインの指示の下、アップル・レコードのアメリカ地区責任者アラン・ステックラーが担当していました。しかし、クラインがビートルズとの契約を終了したため、リリース時にはハリスンの選曲という形で発表されました。

収録曲とバリエーション

青盤には、1967年以降のシングルA面11曲、B面4曲、アメリカ独自シングルA面1曲、アルバム収録曲12曲、計28曲が収録されています。レノン＝マッカートニーの作品が中心ですが、ハリスンの4曲とスターの1曲も含まれています。制作の急ピッチぶりが反映され、キャピタル・レコードが保有する音源とEMIのオリジナル音源で制作されたアメリカ盤とイギリス盤では、音質や構成に違いが見られます。「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のイントロのリフ回数や、スペイン盤での楽曲差し替え、カセットテープ版での収録順変更など、様々なバリエーションが存在します。

アルバム・アートワーク

青盤のジャケットデザインはトム・ウィルクスが担当しました。ジャケット表は1969年、アルバム『ゲット・バック』のジャケット撮影時にEMI本部で撮影された写真、裏はビートルズのデビューアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』の撮影で使用された写真が用いられています。見開き写真は1968年の「マッド・デイ・アウト」フォトセッションのもので、セント・パンクラス・オールド教会前で撮影されたものです。

再リリースの歴史と進化

青盤はその後、幾度もの再リリースを経験し、その度に音質の向上や新たな収録が加えられてきました。

1993年デジタル・マスタリング盤: オリジナル・アナログ・ステレオ・ミックスをベースにデジタル・リマスタリングされた初CD化作品。
2010年デジタル・リマスター盤: アビーロード・スタジオで最新の技術とビンテージ機材を用いた、より精密なリマスタリングが施されました。
* 2023年エディション: 発売50周年を記念し、新曲「ナウ・アンド・ゼン」を含む9曲を収録。さらに、AI技術を用いた「デミックス」技術によるリミックス音源も多数収録されています。このリミックスには、ピーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ：Get Back』の制作で開発された技術が活用されています。

まとめ

『ザ・ビートルズ1967年～1970年』は、単なるベストアルバムではなく、時代背景、制作秘話、そして技術革新の歴史が凝縮された、まさにビートルズ後期の歴史そのものを体現した作品と言えるでしょう。その後の再リリースを通して、常に進化を続け、現代においても多くのファンを魅了し続けています。その人気は、時代を超えて愛されるビートルズの音楽と、制作に携わった人々の努力、そして技術の進歩の賜物と言えるでしょう。

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