ザ・メイン・アトラクション

『ザ・メイン・アトラクション』（The Main Attraction）は、多大な影響力を持つアメリカのジャズギタリスト、グラント・グリーンが1976年に録音し、発表したスタジオアルバムです。この作品は、彼が長年所属したブルーノート・レコードを離れてから初めて正式なリーダー名義でリリースしたアルバムとして、そのキャリアにおいて重要な位置を占めています。ブルーノートからの最後のリリースは、1972年に録音・発表されたライブアルバム『グラント・グリーン・ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』でした。

制作の背景と特徴

本作は、1970年代半ばにおけるグラント・グリーンの音楽的アプローチの変化を反映しています。特に、収録曲のうちタイトルチューンである「メイン・アトラクション」と「フューチャー・フィーチャー」の制作においては、まずバンド全体によるベーシックトラックを録音し、その後でグリーンのギターパートをオーバーダビングするという手法が採用されました。これは、当時のジャズ・ファンクやソウル・ジャズのレコーディングでしばしば見られたスタイルです。

アルバム全体を通して、大編成のアンサンブルがフィーチャーされており、ホーンセクションやキーボード、パーカッションを含む豪華な顔ぶれが参加しています。この編成は、従来の彼のエレクトリックギターを中心としたコンボサウンドとは異なり、より豊かで層の厚いサウンドスケープを生み出しています。音楽性は、タイトなリズムとファンキーなグルーヴに焦点を当てたソウル・ジャズ、フュージョンの色合いを強く持つものです。

収録曲

本作には、以下の3曲が収録されています。

メイン・アトラクション ("The Main Attraction")
作曲：David Matthews, Andy Newmark, Don Grolnick, Steve Khan, Will Lee
演奏時間：19分35秒
フューチャー・フィーチャー ("Future Feature")
作曲：D. Matthews
演奏時間：7分48秒
クリーチャー ("Creature")
作曲：Grant Green
演奏時間：10分18秒

参加ミュージシャン

『ザ・メイン・アトラクション』のレコーディングには、ジャズ、フュージョン、セッションシーンで活躍する多くの著名なミュージシャンが参加しました。その顔ぶれは以下の通りです。

グラント・グリーン - リードギター
スティーヴ・カーン - リズムギター
ヒューバート・ロウズ - フルート
マイケル・ブレッカー - テナー・サクソフォーン・ソロ
ジョー・ファレル - テナー・サクソフォーン (on #1, #2)
ロニー・キューバー - バリトン・サクソフォーン (on #1, #2)
ジョン・ファディス - トランペット (on #1, #2)
バート・コリンズ - トランペット (on #1, #2)
サム・バーティス - トロンボーン (on #1, #2)
ドン・グロルニック - エレクトリックピアノ、クラビネット
ウィル・リー - エレクトリックベース
アンディ・ニューマーク - ドラムス
スー・エヴァンス - パーカッション
カルロス・チャールズ - コンガ、パーカッション (on #1, #2)
デイヴィッド・マシューズ - アレンジ

反響と評価

アルバムは発表後、アメリカ国内で一定の商業的な成功を収めました。ビルボードのジャズ・アルバム・チャートでは最高20位を記録しています。

音楽評論家からの評価は分かれる傾向にあります。オールミュージックの評論家トム・ジュレクは、このアルバムに5点満点中3点の評価を与え、そのレビューの中でいくつかの重要な指摘をしています。彼はこの作品をグラント・グリーンの「傑作の一つとまでは言えない」としつつも、「駄作でもない」と評しています。また、大編成バンドの起用や、グラント・グリーンの「派手なギタープレイよりもグルーヴに焦点を当てている」点に言及しています。ジュレクは「グリーンが全力を出していないとは言えないのでは？」と問いかけつつ、一部で使用されているフェイズシフターのかかったリズムギターが「古臭く聴こえるのも事実」と指摘しています。しかしその一方で、「パンチの効いたファンキーなソウル・ジャズとしての魅力は損なわれていない」と結論づけており、本作の肯定的な側面も評価しています。

『ザ・メイン・アトラクション』は、グラント・グリーンのキャリアの中でも特にフュージョンやソウル・ジャズへの傾倒が顕著になった時期の作品であり、その後の彼の音楽性を理解する上で興味深いアルバムと言えるでしょう。往年のファンからは賛否両論あるかもしれませんが、1970年代のクロスオーバー・ジャズのサウンドを探求する上で聴き逃せない一枚です。

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