ザ・モップス

ザ・モップス：日本のサイケデリック・ロックの先駆者

ザ・モップスは、1960年代後半から1970年代にかけて活躍した日本のグループ・サウンズ、ロックバンドです。彼らは、日本のサイケデリック・ロックにおける草分け的存在として知られ、その革新的な音楽性は、後の日本のロックシーンに大きな影響を与えました。

結成からデビューまで

1966年、埼玉県で星勝、三幸太郎、村上律、スズキ幹治の4人により、インストゥルメンタルバンド「チェックメイツ」として結成されました。その後、スズキ幹治の実兄である鈴木ヒロミツがヴォーカリストとして加入し、5人組バンドとして本格的な活動を開始します。鈴木ヒロミツは、敬愛するアニマルズのエリック・バードンの影響を受け、“黒っぽいロック“（ブルース・ロック）を追求。バンド名は、メンバーの髪型がモップのようだったこと、そして人々の心を音楽で綺麗にしたいという願いに由来するとされています。

都内のゴーゴー喫茶などで活動中にスカウトされ、1967年にホリプロと契約。同年11月、日本ビクターよりシングル「朝まで待てない/ブラインド・バード」でデビューを果たしました。当時のグループサウンズ（GS）とは異なり、ジャズ喫茶や米軍キャンプなどでの演奏を中心に活動を展開しました。

サイケデリック・サウンドの追求

デビューに際しては「日本最初のサイケデリック・サウンド」を標榜。これは、1967年夏にアメリカ旅行でサイケデリック・ムーヴメントを目の当たりにしたホリプロ社長・堀威夫の発案を、メンバーが受け入れたものでした。統一されたユニフォームを着て演奏するグループが多かった当時、モップスはメンバーそれぞれが奇抜な衣装を身にまとい、ドラムセットを客席に対して横向きに設置するなど、アングラ（風俗）ヒッピーを意識した前衛的なスタイルを打ち出しました。LSDパーティを模したイベントを開催し、ライト・ショーを取り入れるなど、サイケデリックなイメージを徹底的に演出しました。また、1968年4月には、現代音楽家の一柳慧の公演に参加するなど、前衛芸術的な活動も展開しました。

しかし、1968年の暮れには日本でのサイケデリック・ムーヴメントも下火となり、モップスも本来のシンプルなR&B、ロックンロール志向に回帰します。

レコード会社移籍と音楽性の変化

1968年、アルバムの選曲を巡り、レコード会社のビクターと対立。アイドルのモンキーズのカバーを要求されたのに対し、アニマルズやゼムの楽曲を演奏したいというバンド側の意向が受け入れられませんでした。この一件がきっかけとなり、モップスはビクターから解雇され、東芝音楽工業へ移籍します。

1969年には、ベース担当の村上律が脱退。メンバーの補充は行わず、三幸太郎がリズム・ギターからベース・ギターへ転向し、4人編成で活動を継続しました。東芝傘下のExpressレーベルから「眠り給えイエス」（1969）をリリースし、1970年代に入ると、日本のロック草創期、いわゆる「ニュー・ロック」のバンドの1つとして、「御意見無用」（1971）やヒット曲「月光仮面」(同)などを発表しました。

1972年には、吉田拓郎が手がけた「たどりついたらいつも雨ふり」がラジオで頻繁にオンエアされ、若者を中心に支持を集めました。また、星勝はグループ在籍中から編曲家・作曲家としても活動し、ザ・ピーナッツや井上陽水らに楽曲を提供し、ヒットさせています。

しかし、歌謡曲とフォークブームに押され、ロック音楽でのバンド活動に限界を感じたモップスは、それぞれの道を歩むため、1974年5月に解散。アルバム『EXIT』が同年7月に発売されました。

解散後と再評価

解散後、鈴木ヒロミツは俳優やタレントとして活動。星勝は、前述の活動に加え、テレビ番組などの音楽を担当しました。鈴木幹治は、モップス解散直後から浜田省吾を支え、三幸太郎は井上陽水のバックバンドに参加後、マネージメント業に転身。2011年頃からは音楽活動を再開しています。

1980年代以降、モップスのサイケデリック期の楽曲は、欧米のガレージ・ロックファンから評価されるようになり、「ブラインド・バード」などの楽曲は、複数の海賊盤コンピレーションに収録されました。アメリカでは、1stアルバム「サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン」が、高値で取引されるなど、再評価の動きが高まりました。

モップスは、グループ・サウンズ、サイケデリック・ロック、ガレージ・ロックの分野から再評価されていますが、70年代初期において「日本のロック・バンド」として重要な存在だったという点は、見過ごされがちです。彼らの音楽は、日本のロック史において、重要な足跡を残しています。

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