セム

セム：ノアの子孫と広大な系譜

セムは、旧約聖書創世記に登場するノアの三人の息子のうちの一人です。兄弟にはハムとヤペテがいます。彼らの年齢順については諸説ありますが、一般的にはセム、ヤペテ、ハムの順で、セムが長男であったと考えられています。しかし、七十人訳聖書では異なる解釈も存在します。

大洪水後、ノアが酔いつぶれて眠りについてしまった際、セムとヤペテはノアの裸体を目撃します。しかし彼らは、父親を気遣い、上着をかけてその尊厳を保とうとしました。この行為がノアに深く感謝され、祝福を受けることになります。

セムは、大洪水後の世界において重要な役割を果たします。彼は多くの息子をもうけ、その子孫たちは各地に広がっていきました。創世記第10章の系譜によると、セムの息子たちはエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムです。これらの息子たちは、後の様々な民族の祖先となったとされています。

エラム: エラム地方の民族の祖
アシュル: アッシリア（アシュール）の民族の祖
アルパクシャド: カルデアなど
ルド: リュディアの民族の祖
* アラム: アラムの民族の祖

特にアラムとアルパクシャドの子孫は、さらに広範囲に勢力を拡大していきました。アラムの子孫たちはウツ、フル、ゲテル、マシュなどに分かれます。これらの地域は、現在のトラコニティス、ダマスカス、アルメニア、バクトリア、スパシヌー・カラックスなどに相当すると考えられています。アルパクシャドの子孫については、その系譜が非常に長く複雑なため、ここでは詳細を省略しますが、アルパクシャドから8代目に当たるのがアブラハムです。

アブラハムとその甥のロトはカルデアで生まれましたが、その後中東に移住しました。彼らの子孫はイスラエル、エドム、ナバテア、ミデヤンといったアラビア半島の民族、そしてモアブ、アンモンなどの民族の祖先となりました。

セムは600歳で亡くなったとされています。興味深いことに、後の研究でヘブライ語、アラム語、アラビア語、エチオピアの諸言語には共通の祖語が存在することが明らかになり、これらの言語はセム語族として分類されるようになりました。この名称は、アウグスト・シュレーツァーによってセムの子孫にちなんで名付けられました。また、セムはイエメンの首都サナアの建設者とも伝えられています。

セムの物語は、大洪水後の世界における人類の拡散と、言語や文化の多様性を理解する上で重要な鍵となります。彼の系譜は、単なる家系図ではなく、古代近東の歴史と文化を紐解くための貴重な手がかりなのです。

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