ザ・ルーズドッグス

ザ・ルーズドッグス（THE LOOSE DOGS）は、日本のロックバンドであり、通称「ルーズ」として親しまれた。特筆すべきは、メンバー4人全員が福井県出身であることに加え、全員がメインボーカルを担当し、作詞作曲も行うという独自のスタイルを確立していた点にある。この稀有なバンド形態から、「4人ともメインヴォーカルのバンド」や「1粒で4度おいしいバンド」といったキャッチフレーズで形容された。

かつてはエイベックス内のレーベル、cutting edgeに所属。メジャーデビュー前のインディーズ期には、同じくエイベックス・グループに属するtearbridge recordsから作品をリリースしていた経緯を持つ。事務所はJUNK MUSEUMであった。

来歴

バンドの結成は、メンバーが福井工業高等専門学校に通っていた頃に遡る。永田武と古市宏樹が先輩、前田一平と高橋健志が後輩という関係性であったが、先輩であった二人が留年したことで、奇しくも四人の卒業年次が同じになった。その卒業を記念してライブを行おうという話が持ち上がり、これがバンド結成の直接的なきっかけとなった。

高専卒業後、彼らは地元福井へと活動の場を移す。当時の福井駅地下道（現在は駅舎改築のため存在しない）を拠点とした路上ライブを精力的に行い、徐々にその知名度を高めていった。この路上ライブは上京直前の2003年 9月23日まで続けられ、最後のライブには約350人の聴衆が集まるほどの人気を集めた。福井での活動期間中には、地元ラジオ局であるFM福井で特集されたり、福井銀行のテレビCMに楽曲が採用されたりと、地元メディアからの注目度も高かった。

上京後、彼らが初めて出演したテレビ番組はフジテレビジョンの「SDM発i」であった。この番組の企画で行われたお台場でのライブでは、目標としていた300人を大きく上回る448人を動員し、ライブの成功は彼らの活動に弾みをつけた。

そして2005年8月3日、シングル「ラジオガール」でメジャーデビューを果たす。メジャーデビュー後も、メンバーの古市宏樹の故郷である旧今立町での「里帰りライブ」や、FBCテレビの24時間テレビチャリティーイベントに参加するなど、積極的に地元福井との繋がりを保ち続けた。年末年始には年越しライブなどで帰郷することもあった。

特徴とメンバー

ザ・ルーズドッグスの最もユニークな点は、前述の通りメンバー全員がメインボーカルを務めること、そして全員が作詞作曲を手がけることにある。このため、発表される楽曲はメンバーそれぞれの個性が色濃く反映され、曲ごとに異なる音楽的なカラーを持つことが可能となった。これが「1粒で4度おいしい」と評された所以である。

特にシングル作品においては、メンバー一人一曲ずつ、合計4曲が収録される形式が多く見られた。俗に「A面」と呼ばれる表題曲には、前田一平の作品が採用されることが比較的多かったが、他のメンバーの楽曲も表題曲となった例がある（古市宏樹「恋に落ちて」、高橋健志「(魚)」、永田武「しょぼい顔すんなよベイベー」）。基本的に、メンバーは自身が作った楽曲でメインボーカルを担当するというスタイルを踏襲していた。

メンバー

永田武（ながたたけし）：ボーカル、エレクトリックギター担当、リーダー。福井県福井市出身。1979年 6月9日生まれ。リッケンバッカーやマーシャルを使用。
前田一平（まえだいっぺい）：ボーカル、アコースティックギター担当。福井県鯖江市出身。1980年 6月21日生まれ。ギブソンを使用。
古市宏樹（ふるいちひろき）：ベース、ボーカル担当。福井県越前市（旧今立郡今立町）出身。1979年 4月19日生まれ。リッケンバッカーを使用。
高橋健志（たかはしけんじ）：ドラムス、ボーカル担当。福井県福井市出身。1980年 6月21日生まれ。パールを使用。

活動終了とその後

バンドは2009年6月末日をもって、所属していたエイベックスとの契約を終了した。そして、翌2010年3月にはバンドの解散を発表。同年6月にはファンに惜しまれつつも、最後のワンマンライブを開催し、約10年間の活動に終止符を打った。

解散から月日が流れた2020年、一度限りとなる再結成ライブが同年6月23日に企画された。しかし、世界的に拡大した新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、2020年3月29日にはライブを翌年へと延期することがアナウンスされた。ライブ延期発表に先立つ同年5月30日には、ファン待望の新曲も発表するなど、復活への期待が高まっていた。しかし、翌2021年4月24日時点でも状況は好転せず、残念ながらライブは再び延期されることとなった。

その他の活動

ザ・ルーズドッグスは、音楽活動と並行してメディア露出も行っていた。特にFMヨコハマでは、「ザ・ルーズドッグスのナマってるよ!」（「tre-sen」内）や「ザ・ルーズドッグスの“犬バタ会議” 」といったレギュラーラジオ番組を担当し、リスナーとの交流を深めた。

また、地元福井放送のマスコットキャラクター「ピントン」とも深い関わりがあった。彼らの楽曲「喜怒哀楽」が、歌詞の一部を「ピントン I love you」と変更した上で、ピントンのスポットCMソングに採用されている。さらに、ピントンのマスコットキャラクター募集時には、楽曲「ジレンマン」がCMに起用されただけでなく、メンバーそれぞれがマスコット案を提出したが、残念ながら採用には至らなかったというエピソードも残っている。2006年10月には、アルバムのPRを兼ねて福井駅前からの生中継に出演し、ピントンが彼らの生演奏に合わせて体操を披露するという一幕もあった。

このように、ザ・ルーズドッグスは地元福井との強い絆を大切にしつつ、独自の音楽スタイルで活動を展開したバンドであった。

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