シアン化ベンジル

シアン化ベンジル：性質、用途、安全性

シアン化ベンジル (benzyl cyanide, BnCN) は、芳香族ニトリルの一種で、特有の香りと高い反応性を持ち、多様な用途を持つ有機化合物です。化学式はC6H5CH2CNで表され、医薬品合成における中間体として、また特定の香料の成分としても利用されています。

性質と反応

シアン化ベンジルは、塩化ベンジルとシアン化ナトリウムを反応させることで合成されます。その分子構造に含まれる活性メチレン基は、容易に脱プロトン化されるため、有機合成化学において重要な役割を果たします。この性質を利用して、様々な誘導体の合成に用いられています。

用途

シアン化ベンジルの主な用途は、医薬品製造における中間体です。メチルフェニデート、フェノバルビタール、アンフェタミンといった薬物の合成過程において重要な役割を果たしており、これらの薬物の違法製造への関与を懸念して、アメリカ合衆国では規制対象物質となっています。

一方で、シアン化ベンジルは、その独特の香気から香料の成分としても利用されています。特に、ジャスミンやネロリなどの香りを想起させる、重厚なフローラル調の香りを有しており、これらの香料の調合に用いられることがあります。ただし、日本では香料としての使用は認められていないようです。天然には、コショウソウの精油やネロリ油中に少量含まれています。合成品は、シグマアルドリッチ社のような化学薬品メーカーから供給されています。

安全性

シアン化ベンジルは、強い毒性を示す物質であり、取り扱いには細心の注意が必要です。日本では、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されており、消防法では危険物第4類（引火性液体）第3石油類に分類されています。

毒性に関するデータとしては、ラットへの経口投与による半数致死量（LD50）が270mg/kg、経皮投与によるLD50が2g/kg、マウスへの吸入による最小致死量（LCL0）が100mg/kgという報告があります。これらの数値は、シアン化ベンジルの強い毒性を示しており、皮膚への接触や吸入による健康被害の可能性を考慮する必要があります。作業時は、適切な保護具を着用し、換気の良い場所で取り扱うべきです。誤って摂取した場合、速やかに医療機関に連絡する必要があります。

まとめ

シアン化ベンジルは、医薬品合成や香料製造に用いられる有用な化合物ですが、その強い毒性と規制の状況を理解した上で、安全に扱うことが重要です。取り扱いには、法令を遵守し、適切な安全対策を講じる必要があります。

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