シイノミミミガイ

シイノミミミガイ（椎の実耳貝）について

シイノミミミガイ（学名: Cassidula plecotrematoides）は、オカミミガイ科に属する巻貝の一種です。この貝は、東アジアの南日本を含む熱帯および亜熱帯地域に生息し、特に内湾の海岸で見られます。生息環境は転石や石垣からなる場所で、独特な形状と外観を持っています。日本には二つの亜種が存在し、九州や四国、本州南部で見られるタイプをシイノミミミガイ C. p. japonica、奄美大島以南に分布するヒゲマキシイノミミミガイ C. p. plecotrematoidesと呼びます。

特徴

シイノミミミガイの成貝は、殻長が約10mm程度です。その貝殻は尖った水滴型で、外観はシイの実（ドングリ）に似ています。巻の繋ぎ目である縫合には、微細な螺溝が数本見られますが、全体的には滑らかな表面を持っています。色合いは赤褐色や紫褐色が一般的ですが、黄褐色の個体も確認されています。成貝の特徴的な部分として、殻口外縁は厚くなっており、殻底へ向かって張り出す形をしています。内側には3つの突起（2つの内唇と1つの軸唇）、外側には1～2つの突起があります。また、殻底には臍孔がなく、周囲の縫帯が少し盛り上がる特徴があります。若い個体では、螺塔が短毛で覆われており、殻口外縁はまだ肥厚していません。名前の由来でもある「ミミ」は、この貝の殻口の形状が人間の耳たぶに似ていることから来ています。

分布

シイノミミミガイの亜種であるシイノミミミガイは、長崎県がタイプ産地となり、日本では三浦半島以南の太平洋側と山口県以南の日本海側で見られます。一方、基亜種のヒゲマキシイノミミミガイは、熱帯インド太平洋沿岸で広範囲に分布しています。主に、内湾にある転石海岸や古い石垣護岸などに生息しており、特に暗く湿った場所に潜むことが多いです。この環境には、ウミニナやフトヘナタリ、その他多くの生物も共生していますが、シイノミミミガイは満潮線近くで見られ、他の生物よりも生息範囲が狭く、暗い場所にいるため、実際の生息状況を把握するのは難しいです。

人間との関わり

シイノミミミガイ C. p. japonicaの環境状況は厳しく、環境省のレッドリストでは絶滅危惧I類（CR+EN）に指定されています。この種は、特に三重県、香川県、愛媛県、佐賀県、福岡県、長崎県、熊本県、鹿児島県などの県別レッドリストでも同様に位置づけられています。さらに、長崎県では「未来環境条例」により、捕獲が規制される指定種とされています。一方、ヒゲマキシイノミミミガイ C. p. plecotrematoidesは、準絶滅危惧に分類されています。

最近では、内湾の石垣護岸がコンクリートに改修されることが進み、これに伴いシイノミミミガイの生息地は急減してきました。特に九州以北では、生息地が減少し危機的な状況となっています。しかし、南西諸島ではヒゲマキシイノミミミガイが比較的多く見られます。これらの状況から、環境保護の観点からも、この貝の生息地を維持するための対策が求められています。

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