シオジ

シオジ（Fraxinus spaethiana）とは

シオジは、モクセイ科トネリコ属に分類される落葉性の高木です。日本では本州、四国、九州に分布し、特に太平洋側の湿潤な地域に多く見られます。山地や谷間の岩がちな沢沿いを好み、サワグルミなど他の樹木と混生していることが多いです。

シオジの形態

シオジは、成長すると樹高35メートル、胸高直径1メートルに達する高木です。幹は直立し、樹皮は灰白色で縦に細かい割れ目が入ります。一年枝は太く淡褐色で皮目があり、冬芽は円錐形で黒褐色や灰褐色をしています。葉は奇数羽状複葉で、7～9枚の小葉から構成されます。花は雌雄異株で、円錐花序を形成し、4月から5月にかけて開花します。果実は翼果で、狭長楕円形をしており、トネリコ属の中では最大級の大きさです。

根は浅く広がる浅根性で、細根は表層に集中しますが、太い垂下根も伸ばします。

シオジの生態

シオジは、山地や谷間の沢沿いなど、やや湿った岩場に生育します。サワグルミなどの樹木と混生し、自然豊かな環境を形成します。シオジは、他の樹木と比較して、生育環境への適応力は高いと言えます。

分布

シオジは、本州、四国、九州に自生しており、関東地方以西の太平洋側に多く分布します。日本海側にはあまり見られません。これは、シオジが比較的温暖で湿潤な気候を好むためと考えられます。

人間との関わり

シオジは、古くから木材として利用されてきました。しかし、近年では蓄積量が著しく減少しており、貴重な資源となっています。

シオジとヤチダモ

シオジは、同じトネリコ属のヤチダモと非常によく似ています。見分けるポイントは、シオジは葉柄の基部が肥大して茎を包み込むように付いているのに対し、ヤチダモは茎の周りの1/4程度までしか包み込まない点です。また、ヤチダモは本州中部から北海道にかけての寒冷地に多く分布するのに対し、シオジは関東地方以西に分布するという違いもあります。

木材としての利用

シオジの木材は、辺材が淡い黄白色、心材が淡灰褐色から淡黄褐色をしています。辺材と心材の境界は明瞭で、年輪もはっきりしています。木目は直通で、木肌はやや粗く、アッシュやタモと同様の属性を持ちますが、やや色が濃いめです。木理はやや交錯し、肌目も粗いですが、時に美しい杢目を現します。硬質で弾力性に富み、加工性も良いことから、家具や装飾材として利用されます。しかし、産出量が少ないため、大量に利用されることはありません。また、耐朽性は中程度です。

シオジの語源

シオジの名前は、柾目が通りやすく割りやすいことから「柾寿（まさじゅ）」や「柾樹（まさき）」と呼ばれ、それが転じて「シオジ」になったという説があります。

関連情報

群馬県上野村には、シオジの原生林である「上野楢原のシオジ林」があり、国の天然保護区域に指定されています。この場所は、シオジの自然な姿を観察できる貴重な場所です。

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