シカゴの軌跡

シカゴの軌跡 (The Chicago Transit Authority)

シカゴ出身のロックバンド、シカゴ・トランジット・オーソリティのデビューアルバム『シカゴの軌跡』は、1969年に録音・発売された作品です。2022年現在、このアルバムの正式な邦題は「シカゴI（シカゴの軌跡）」として認識されています。後にバンドは、シカゴというシンプルな名前に改名されました。

このバンドは1967年に結成され、当初は「ビッグ・シング」と呼ばれていました。しかし、1968年にプロデューサーのジェイムズ・ウィリアム・ガルシオと契約を結んだ際に「シカゴ・トランジット・オーソリティ」という名前が新たに付けられました。ガルシオは、バンドの独特なスタイルが将来成功すると直感し、レコード会社にアプローチしたことで、彼らはコロムビア・レコードと契約を交わしました。デビューアルバムの録音は、その契約から1ヶ月も経たないうちに開始されました。

当初、アルバムの制作に関してはコロムビア・レコード内部で懐疑的な見方が強く、グループには条件付きの印税カットを受け入れる必要がありました。しかし、最終的にはアルバムが2枚組になることが決まりました。この作品には、バンドのメンバーが幾つかのスタイルを融合させたユニークなサウンドが反映されています。

最初のバンド構成は、キーボードのロバート・ラム、ギタリストのテリー・キャス、ベーシストのピーター・セテラ、木管楽器を演奏するジェイムズ・パンコウ、リー・ロクネイン、そしてドラムのダニー・セラフィンから成り立っていました。それぞれのメンバーがリードボーカルを分担し、ラム、キャス、パンコウが主に作曲を手掛けました。特にキャスのギターテクニックは際立っており、ジミ・ヘンドリックスからも称賛を受けるほどの腕前でした。

このアルバムは1969年の4月に発売され、瞬く間にチャートで成功を収めました。アメリカでの最高順位は17位、イギリスでは9位を記録しました。しかし、初期の反応は批判的であり、アルバムからヒットシングルが生まれることはありませんでした。これにより、バンドはアルバム指向のグループと見なされることになりました。しかし、後にリリースされた「いったい現実を把握している者はいるだろうか？」や「クエスチョンズ67/68」などのシングルが遅れてヒットし、その後のアルバムの成功も相まって、アルバムは171週にわたりチャートに留まり、ゴールドディスク認定を受けました。その後、プラチナムやダブルプラチナムの認定も受けることになりました。

バンドがアルバムのツアーを行っている最中、本物のシカゴ交通局から商標侵害の訴えを受け、名称を「シカゴ」に短縮することを余儀なくされました。

2002年には、このアルバムがリマスターされ、ライノ・エンタテインメントからCDとして再発売されました。シカゴ・トランジット・オーソリティのデビューは、彼らの音楽的な影響力と革新性を確立する重要な出発点となったのです。

収録曲リスト

サイド 1

1. イントロダクション - "Introduction" (Terry Kath) – 6:35
2. いったい現実を把握している者はいるだろうか？ - "Does Anybody Really Know What Time It Is?" (Robert Lamm) – 4:35
3. ビギニングス - "Beginnings" (Lamm) – 7:54

サイド 2

1. クエスチョンズ67/68 - "Questions 67 and 68" (Lamm) – 5:03
2. リッスン - "Listen" (Lamm) – 3:22
3. ポエム58 - "Poem 58" (Lamm) – 8:35

サイド 3

1. フリー・フォーム・ギター - "Free Form Guitar" (Kath) – 6:47
2. サウス・カリフォルニア・パープルズ - "South California Purples" (Lamm) – 6:11
3. アイム・ア・マン - "I'm A Man" (Jimmy Miller/Steve Winwood) – 7:43

サイド 4

1. 1968年8月29日シカゴ、民主党大会 - "Prologue, August 29, 1968" (James William Guercio) – 0:58
2. 流血の日（1968年8月29日） - "Someday (August 29, 1968)" (Lamm/James Pankow) – 4:11
3. 解放 - "Liberation" (Pankow) – 14:38

このアルバムはスタジオで録音されたライブ形式で、オーバーダブは行っていません。

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