VA-111 シクヴァルについて
VA-111 シクヴァル(
ロシア語: Шквал、
英語: Shkval)は、ソビエト連邦によって開発されたスーパー
キャビテーション技術を用いた高性能な魚雷です。この魚雷は、最大速度が200
ノット(370km/h)に達することが可能であり、従来の魚雷とは異なり、
ロケットエンジンによる推進力を活用しています。このためシクヴァルは、単なる魚雷というよりも「水中を推進する
ロケット」として扱われることが多いです。
「シクヴァル」という名は「
驟雨」や「
突風」を意味しており、その名にふさわしい驚異的なスピードを持っています。また、日本語表記については一貫性がなく、シクヴァールやシュクヴァルなど様々な形で書かれることがありますが、
ロシア語に最も近い表記はシュクヴァールです。
設計と開発
シクヴァルの設計は1960年代後半に始まりました。ソビエトのNII-24調査研究所に対し、新しい兵器システムを開発する指示が出され、1969年に流体力学応用調査研究所(NII PGM)が設立されました。ここでの研究と開発が、シクヴァルの製造に直結することとなったのです。この魚雷は、敵
潜水艦から発射された魚雷に対抗するための装備として設計されており、高速性を活かして敵の回避を強いることを狙っています。
公表されたのは1990年代初期ですが、実際の運用は1977年から行われていたとされています。同魚雷の優れた点は、スーパー
キャビテーション技術を活用し、水中移動時の
摩擦抵抗を大幅に減少させることです。これにより、シクヴァルはNATOの標準的な魚雷よりも遥かに高速での移動が可能となります。
魚雷は533mmの発射管から射出され、初速50
ノット(92.6km/h)で発射され、固体燃料
ロケットが点火されると最高速度200
ノット(370.4km/h)に達します。さらに、一部の報告では250
ノット(463km/h)以上の速度を達成できる可能性も示唆されています。この推進システムは
過酸化水素と
ケロシンを使用しており、大量のガス泡を形成することで水中での移動効率を最大化しています。
制御機構
VA-111の方向制御には、魚雷の内部に配置された4枚のフィンが使用されます。これにより、水の抵抗を受けながらも方向を変更できるようになっています。敏捷性を向上させるために、ノーズ部分にプッシュプレートが設けられ、旋回能力を高める役割を果たします。シクヴァルはその特異な構造から、急激な方向転換を行うことも可能です。
生産と現状
シクヴァルはキルギスタンの国営工場で製造されており、近年では
ロシアがこの工場の75%の所有権を求めることとなりました。これは、
ロシアに対するキルギスタンの負債の帳消しと引き換えに求められた権利です。現代では他の国々でもスーパー
キャビテーション技術を採用した魚雷の開発が進められており、アメリカとドイツの海軍もこの技術を探索しています。さらに、中国はシクヴァルのサンプルを
ロシアから購入し、
イランも類似の兵器を開発する意向を示しています。
また、後継魚雷として、高速魚雷「キシュニク」の開発が報じられており、シクヴァル系の技術は今後も進化を遂げそうです。シクヴァルはその特異な形式と性能から、戦略的な兵器として注目されています。
諸元
- - 全長: 8.2m
- - 直径: 533mm
- - 重量: 2,700kg
- - 弾頭重量: 210kg
- - 初速: 50ノット (93 km/h)
- - 最大速度: 200ノット (370 km/h) 以上
- - 射程: 約11–15km
シクヴァルは、技術革新と戦略的な視点から見ても、非常に興味深い兵器の一つです。その設計や性能は、現代の水中戦に新たな可能性をもたらすものと言えるでしょう。