シグナス CRS Orb-2

シグナスCRS Orb-2は、オービタル・サイエンシズ社（現在のノースロップ・グラマン）が運用する無人宇宙補給機シグナスの3回目の飛行ミッションです。このミッションは、アメリカ航空宇宙局（NASA）の商業補給サービス（CRS）契約の下で実施され、国際宇宙ステーション（ISS）へ重要な物資を輸送することを目的としていました。シグナスによるISSへの補給飛行としては通算3回目にあたり、打ち上げに使用されたアンタレスロケットにとっては4回目の飛行となりました。

機体名と打ち上げ

このミッションに投入されたシグナス宇宙船は、オービタル・サイエンシズ社の元職員であり宇宙飛行士であったジャニス・E・ヴォス氏に敬意を表して、「ジャニス・ヴォス」と名付けられました。打ち上げは当初2014年5月1日に計画されていましたが、アンタレスロケットのAJ-26エンジンに関連する試験設備の不具合やその後の悪天候などが重なり、複数回にわたって延期されました。最終的に、バージニア州にある中部大西洋地域宇宙基地から、2014年7月13日に打ち上げられました。

打ち上げ後のシグナスは、初期段階では計画より低い軌道に投入されました。しかし、機体からの分離後、シグナスは正常に太陽電池アレイを展開し、地上管制からの指令に基づいて軌道修正を開始。約2日間をかけて徐々に高度を上昇させ、ISSとのランデブーに適した軌道に乗りました。

ISSとのランデブー、ドッキング、運用

軌道調整が完了すると、シグナスはISSへの接近プロセスを開始しました。打ち上げから4日後の2014年7月16日（協定世界時UTC）には、ISSから約12メートルの距離まで自動で接近し、その位置を保持しました。ISS搭乗クルーの操作により、ISSはロボットアームによる捕捉に最適な「フリードリフト」モードに移行。ISSに搭載されているロボットアーム「カナダアーム2」がシグナスを捕捉し、ISSの共通結合機構（Common Berthing Mechanism）の天底ポート（地球側を向いたポート）に無事ドッキングさせました。

シグナスはISSに約36日間にわたりドッキングした状態で運用されました。この期間中、ISSクルーはシグナス内部にアクセスし、搭載されていた約1,650キログラム（約3,630ポンド）の新しい物資をISS船内へ運び込みました。同時に、ISSで発生した使用済み品や不用品など、約1,470キログラム（約3,250ポンド）の廃棄物をシグナス船内へ移載しました。これらの廃棄物は、ミッション終了後にシグナスとともに大気圏再突入で焼却処分されます。

任務完了と再突入

補給ミッションを終えたシグナス宇宙船は、2014年8月15日にISSからロボットアームによって分離されました。ISSから安全な距離まで離れた後、当初は再突入前に最大15日間の追加工学テストが予定されていましたが、実際には分離からわずか2日後の2014年8月17日に、太平洋上の指定海域に向けて制御された大気圏再突入を行い、ミッションを完了しました。

輸送された貨物の内訳

シグナスCRS Orb-2ミッションでISSへ届けられた貨物総量は約1,650キログラムに及びました。その主な内訳の合計は約1,494 kgと記録されており、多岐にわたる品目が含まれていました。

乗員向け支給品: 約764 kg （食料、個人用品など、宇宙飛行士の生活に必要な物資）
ハードウェア: 約355 kg （ISSの維持・運用、実験に必要な機器や部品）
科学研究物資: 約327 kg （様々な実験装置、試料、キューブサット、日本のJAXAによる実験機器など）
コンピューター用物資: 約8.2 kg （データ処理機器、写真・映像撮影機器など）
* 船外活動用品: 約39 kg （宇宙飛行士が船外活動で使用する装備品）

シグナスCRS Orb-2ミッションは、ISSへの継続的な物資補給を成功させ、国際的な宇宙開発における商業宇宙輸送の重要性を改めて示しました。

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