システムズ・フォーミュレート

株式会社システムズフォーミュレート

株式会社システムズフォーミュレートは、日本のパーソナルコンピュータ市場の初期段階において、ハードウェアの販売と利用教育を組み合わせた独自のビジネスモデルを展開した企業です。短期間で成長を遂げたものの、激動の市場環境に対応できず、その歴史に幕を下ろしました。

創業と事業の立ち上げ

同社は1978年9月、元富士通のコンピュータ技術者であった渡辺昭雄氏によって設立されました。渡辺氏は、東洋工業（現マツダ）や富士通で大型コンピュータの開発に携わった経験を持ちます。彼がパソコン事業を構想するきっかけとなったのは、米国出張時に購入したPET 2001を子どもが自然に使いこなす様子を見たことでした。当時の国内では、パソコンは高価で専門家向けという認識が一般的でしたが、渡辺氏はその将来性を見抜きます。富士通社内での低価格パソコン事業化の難しさを悟った彼は、独立を決意。富士通および関連会社の出資を得て、資本金4800万円でシステムズフォーミュレートを設立しました。

設立当初、日本のパソコン市場は未成熟で、流通しているのは主に輸入製品でした。同社は、東京や大阪といった主要都市にショールームを開設し、輸入パソコンの展示販売を行うとともに、初心者向けの教育講座「マイコン道場」を開始しました。この「マイコン道場」は人気を博し、最終的な卒業生数は1万人を超える盛況ぶりでした。販売と教育をセットにしたこの戦略は、パソコンの普及を後押しする上で効果的でした。

製品開発と最盛期

教育事業でノウハウを蓄積した同社は、自社企画のパーソナルコンピュータ開発にも着手します。そして1981年5月、ビジネス向けのパソコン「BUBCOM80」を発表しました。この製品は同社の設計に基づき、富士通の部品事業本部がOEM生産を担当しました。同年9月にはBUBCOM80の出荷が始まり、事業は最盛期を迎えます。特に1981年10月には、月間売上高が2億2000万円に達するなど、設立からわずか3年で大きな成功を収めました。

競争激化と経営悪化

しかし、この頃から日本のパソコン市場は急速に拡大し、国内外からの新規参入が相次ぎました。 NECのPC-8801シリーズや富士通自身のFMシリーズなどが登場し、市場競争は一気に激化します。販売市場では熾烈な価格競争が始まり、教育市場でも多くの事業者が参入。かつて奏功した教育受講者へのパソコン販売という戦略は、徐々に通用しなくなっていきました。

競合他社の台頭と価格破壊により、同社の業績は悪化。BUBCOM80の在庫が膨れ上がり、1982年3月時点にはその評価額が5億円に達していました。自社製品だけでなく、他社製品も扱っていた同社にとって、主要株主でもある富士通からの継続的な支援を得ることも難しくなっていきます。富士通自身もパソコン事業に注力し始めていたからです。

倒産とその影響

経営状態の悪化が進む中、資金繰りに行き詰まった同社は、1983年3月31日に手形が不渡りとなり、事実上の事業停止に追い込まれます。そして同年4月6日、東京地方裁判所へ自己破産を申し立て、同日中に破産手続き開始決定を受けました。負債総額は8億7000万円に上りました。破産直前の3月から4月にかけては、大量に滞留したパソコン在庫を処分するため、異例のバーゲンセールを実施していたといいます（当時の在庫評価額は2億4000万円）。

システムズフォーミュレートの倒産は、日本のパソコン市場が黎明期から成長期へと移行する過渡期に発生しました。急速に拡大する市場の中で、一時的な成功を収めたものの、変化の波に乗り切れずに力尽きたベンチャー企業の一例として、当時の業界で大きな話題となりました。

システムズフォーミュレートの倒産は、日本のパソコン市場が黎明期から成長期へと移行する過渡期に発生しました。急速に拡大する市場の中で、一時的な成功を収めたものの、変化の波に乗り切れずに力尽きたベンチャー企業の一例として、当時の業界で大きな話題となりました。同社の歩みは、技術革新が早く競争の激しいIT業界における事業継続の難しさを示す事例と言えるでしょう。

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