シックス・ネイションズ

シックス・ネイションズ・チャンピオンシップ（Six Nations Championship）

シックス・ネイションズ・チャンピオンシップ（Six Nations Championship）は、ヨーロッパの主要6カ国（イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、イタリア）の代表チームが参加して行われる、ラグビーユニオンの国際大会です。一般には「6カ国対抗」という呼称で親しまれています。ビールメーカーであるギネスがタイトルパートナーを務めていることから、公式には「ギネス・シックス・ネイションズ（Guinness Men's Six Nations）」として開催されています。

毎年2月から3月にかけての期間に実施され、参加する全チームが他の全てのチームと一度ずつ対戦する総当たり方式で行われます。各チームは合計5試合を戦い、大会全体では15試合が開催されます。ホームゲームとアウェーゲームは毎年の大会で入れ替わる形式が採用されています。

歴史

この大会の起源は古く、ラグビーのテストマッチ（国代表チーム間の公式戦）の歴史と深く結びついています。1871年には史上初のテストマッチがスコットランドとイングランドの間で行われました。その後、アイルランド（1875年）、ウェールズ（1881年）も代表チームを結成し、それぞれイングランドと初めて対戦しました。

まもなく、これら4カ国（イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ）の間で毎年定期的に対戦が行われるようになり、総合成績で順位を決める試みが始まりました。1882年から1883年にかけて開催されたほぼ全ての組み合わせによる対戦でイングランドが全勝した大会が第1回と見なされており、当時は「ホーム・ネイションズ・チャンピオンシップ（Home Nations Championship）」と呼ばれていました。

1910年にはフランスが大会に加わり、参加国が5カ国となったため、「ファイブ・ネイションズ（5カ国対抗）」と改称されました。しかし、フランスがアマチュアリズムの規約に反して選手に報酬を支払ったとされる問題から、1932年には一時的に大会から除外され、再び「ホーム・ネイションズ・チャンピオンシップ」として4カ国で開催されました。

1940年から第二次世界大戦の影響で大会は中断を余儀なくされましたが、1947年に再開されると共にフランスも復帰し、再び「ファイブ・ネイションズ」体制に戻りました。そして、2000年にイタリアが新たに大会に迎え入れられたことにより、現在の「シックス・ネイションズ」という大会名が確立され、今日に至るフォーマットとなりました。イタリアの加入初年度に出場した選手であるマッシモ・クッティッタは、後にその名を冠した「クッティッタ・カップ」設立のきっかけとなりました。

2019年からはギネス社がタイトルパートナーとなり、「ギネス・シックス・ネイションズ」として開催されています。なお、女子大会は2024年から同様にギネスが冠スポンサーとなっています。

近年では、2020年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生し、例年の3月中の終了が困難となったため、一部の試合が10月に延期されて実施されるという異例の事態も発生しました。

大会形式と賞

大会では、総当たり戦の結果に基づき、獲得した勝ち点で順位が決定されます。最も勝ち点の多いチームが優勝となり、優勝チームには専用のトロフィーが授与されます。現在のトロフィーは2016年大会から使用されているもので、高さ約75cm、重さ7kgの銀製であり、6つの面でデザインされています。

優勝に加えて、特定の成果には特別な栄誉が与えられます。

グランドスラム (Grand Slam)：全勝で優勝を飾ったチームに与えられる最高の栄誉です。大会の全ての試合に勝利することを意味します。
トリプルクラウン (Triple Crown)：ホーム・ネイションズと呼ばれるイングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズの4カ国間で行われる試合において、その4カ国の中で全勝（3勝）を達成したチームに与えられる栄誉です。かつて4カ国時代の全勝はグランドスラムと呼ばれていましたが、5カ国以降はホーム・ネイションズ間での全勝をトリプルクラウンとして区別しています。

グランドスラムおよびトリプルクラウンには、物理的なトロフィーや賞が授与されることはなく、その達成自体が大きな栄誉とされています。

ウドゥン・スプーン (Wooden Spoon)：大会で最下位となったチームに対して非公式に与えられる不名誉な称号です。「木のスプーン」を意味し、「貧乏な家の子供は木のスプーンをくわえて生まれてくる」というイギリスの古い言い伝えに由来するとされています。実際に木のスプーンやトロフィーが授与されるわけではありませんが、この称号で最下位が示されます。6カ国体制となった2000年以降、最も多くウドゥン・スプーンとなったのはイタリアです。

2国間トロフィー (Rivalry Trophies)：シックス・ネイションズの対戦の中には、特定の2カ国間での試合勝者に授与されるトロフィーがいくつか存在します。これらは「ライバルトロフィー（Rivalry Trophies）」と呼ばれ、現在7つのトロフィーが対象となっています（例: スコットランド対イングランドのカルカッタカップ、スコットランド対イタリアのクッティッタ・カップなど）。勝利チームにトロフィーが授与されますが、試合が引き分けに終わった場合は、その年の勝者はなくトロフィーも移動しません。特にスコットランドは、大会の全5試合がこれらの2国間トロフィーの対象となっています。

会場

シックス・ネイションズの試合は、参加各国の主要なスタジアムで開催されます。決まった会場だけでなく、状況に応じて変更される場合もあります。例えば、2024年大会では、パリオリンピックの準備のため、フランス代表は通常使用するスタッド・ド・フランスではなく、複数の代替会場を使用しました。

日本での放送・配信

日本国内では、過去にはJ SPORTS（旧名称含む）が1998年から2015年まで大会を放送していました。2016年からはWOWOWが国内での放送・配信権を獲得し、現在に至るまで大会の中継を行っています。また、近年ではNetflixが大会の舞台裏を描いたドキュメンタリーシリーズを配信しており、ラグビーファン以外からの注目も集めています。

本大会は、ヨーロッパにおけるラグビーユニオンの最高峰の大会として、世界中のラグビーファンから大きな注目を集めています。女子大会や年代別大会、クラブチームの大会など、関連する大会も多く存在します。

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