シッスル勲章

シッスル勲章

シッスル勲章（Order of the Thistle）は、スコットランドにおける最高勲章で、その正式名は「最も古く高貴なシッスル勲章（The Most Ancient and Noble Order of the Thistle）」です。この勲章は、イングランドのガーター勲章に次ぐ、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国における高位の騎士団勲章として知られています。

騎士団のメンバーとして叙勲されることは、スコットランドにおける高い名誉であり、歴史的には中世の騎士団に由来しています。日本では「アザミ勲章」や「シスル騎士団」などとも称され、その名はスコットランドの国花でもあるアザミに由来しています。

歴史

シッスル勲章の起源には諸説あり、明確な制定年は不明ですが、819年にスコットランドのアカイウス王がシャルルマーニュ帝との同盟のために設立したとの伝説が有名です。また、同王が夢にセント・アンドリューを見たのち、戦いに勝利したことを記念して勲章が制定されたとも言われています。しかしながら、これらは伝説であり、公式な記録は存在していません。

15世紀から16世紀の間に、スコットランドでは複数の勲章が存在していましたが、その中でもアカイウス王による「セント・アンドリュー勲章」とジェームズ3世による「アザミ勲章」が1687年に統合され、現在のシッスル勲章が設立されたと考えられています。1687年にカトリック信者であったジェームズ2世（スコットランドではジェームズ7世）が勲章を正式に再制定しましたが、その後の名誉革命により、彼は廃位され、一旦シッスル勲章も廃止となってしまいました。

1703年には、アン女王のもとでシッスル勲章は復活し、以後はプロテスタントのスコットランド貴族に対する栄誉として機能しました。1822年にはジョージ4世がスコットランドを訪れた際にこの勲章を授与し、再びその権威が復活しました。その際、騎士団のメンバー数も増やされ、より多くの貴族がこの栄誉を受けることが可能となりました。

概要

シッスル騎士団のモットーは「Nemo me impune lacessit」（何人も咎無く我を害せず）です。騎士団のメンバーは男性が「Knight of the Thistle」、女性が「Lady of the Thistle」と呼ばれ、騎士の称号は「KT」または「LT」と略されます。

守護聖人としてセント・アンドリューが崇められ、毎年11月30日に新たな叙勲が行われます。騎士団の礼拝堂はエディンバラのセント・ジャイルズ大聖堂内のシッスル・チャペルにあり、叙任式などの重要な儀式がここで行われます。また、ガーター勲章が外国元首やイングランド以外の連合王国民にも授与されるのに対し、シッスル勲章は基本的にスコットランド系の人々だけに与えられています。

勲章について

シッスル勲章は頚飾、大綬章、星章から成り立ち、勲章の正装としては緑色のローブと帽子、赤紫色のフードが定められています。頚飾はアザミをモチーフにした金の鎖で構成され、先端にはセント・アンドリューのマークが付いています。大綬章には、モットーの周囲にセント・アンドリューの十字が配されています。

現在のメンバー

シッスル騎士団には現在も数名の貴族が名を連ねており、騎士団長や秘書官などの役職も正式に設けられています。主権者（Sovereign）をはじめ、騎士団員はスコットランドの王室に関連する人物が多く、伝統的な役割を果たしています。女性への正式な叙勲は1987年に制度化されたため、女性騎士の存在も増えつつあります。

シッスル勲章の歴史とその重要性は、スコットランドの文化と伝統を深く反映しており、今日でもその存在は高く評価されています。

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