シトロエン・SM

シトロエン・SMについて

シトロエン・SMは、フランスの自動車メーカーシトロエンによって製造されたクーペ型の乗用車です。このモデルは、独自のボディ構造と高性能エンジンを搭載し、1970年から1975年までの短い期間で生産されました。SMは、シトロエンの代表作であるDSを基にした2ドアボディを持ち、マセラティとの提携により、V型6気筒のDOHCエンジンを採用した前輪駆動のハイパフォーマンスクーペとなりました。

概要

シトロエン・SMは、特に「前輪駆動の車で200km/hを超える」という当時無理とされた目標を設定した実験的な側面が強い自動車です。1970年に市場に登場し、1975年に生産終了となりましたが、同時期にマセラティはSMの機構を基にした4ドアセダン、クアトロポルテ・シリーズIIを製造しました。このモデルは13台のみが生産され、非常に希少な存在です。

全長は約4.9メートル、全幅は1.8メートルを超える大柄な造りをしており、主に前席に重きを置いた設計がなされていますが、後部座席はかなり狭いのが特徴です。左ハンドルのみのモデルで、右ハンドル版は存在しません。

機能と設計

この車両のヘッドライトは、日本に輸入されたモデルでは米国仕様を基にした固定式の丸型4灯になりましたが、フランスでの仕様は可動式の角型6灯でした。また、当初は5速マニュアルトランスミッション（MT）のみの設定でしたが、後に3速自動変速機（AT）も追加されています。5速MTのシフトノブは独特な構造で、多くのユーザーがAT仕様を選ぶ傾向にありました。また、5速MTは他の車種にも供給されたことで、日本ではロータス・エスプリと共通していました。

SMのエンジンは、特別な設計によるV型6気筒仕様で、マセラティ・ボーラのエンジンと共通点が多いです。このエンジンは、振動を抑えるためのバランサーシャフトを持ち、複雑なカム駆動方式でトランスミッションとの配置にも独特の工夫が凝らされています。整備が難しいとされており、職人でもその複雑さに戸惑う事例が多発しました。

ラリー競技とパフォーマンス

1971年以降、シトロエン・SMはラリー競技にも挑戦しました。モロッコ・ラリーやモンテカルロなどに参加し、モンテカルロではボディサイズを短縮した特別仕様を投入しましたが、その長いボディとFF仕様の欠点から成功に繋がることはありませんでした。

日本での存在

日本では、当時の西武自動車販売によって134台が正規輸入されました。これらの車両は米国仕様を基にしていましたが、後にオーナーたちによってカスタマイズが施されることもありました。最近では、欧州仕様のSMが個人輸入されているケースもあり、可動式の角型ヘッドライトを持つモデルが少数存在しています。現在、日本国内のSMは50～60台程度が維持されていると推定されています。

シトロエン・SMは、ただの自動車にとどまらず、フランス自動車の歴史の中で重要な位置を占めるモデルとして、その存在感を放っています。

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