シボレー・エクスプレス

シボレー・エクスプレス（Chevrolet Express）

シボレー・エクスプレスは、アメリカ合衆国の自動車メーカーであるゼネラルモーターズ（GM）が製造し、シボレーブランドから販売されているフルサイズバンです。かつて同ブランドが展開していたシボレー・アストロと比較して、より大きなボディサイズを特徴としています。

概要

長年親しまれたシボレー・バンの後継車種として登場したエクスプレスは、主に米国市場において、企業や事業者の主要な商用バンとして広く利用されています。しかし、その広大な室内空間を活かして、商用利用にとどまらず、大家族向けのファミリーカー、キャンピングカーのベース車両、さらには要人送迎用の特装リムジンなど、実に多様な用途に対応できる汎用性の高さも有しています。

ラインナップとしては、荷物輸送に特化した「エクスプレス・カーゴ」と、多人数での移動に主眼を置いた「エクスプレス・パッセンジャー」が設定されています。カーゴモデルには、車両総重量に応じて「2500」と「3500」の区分があり、パッセンジャーモデルには、最大12名乗り（2-3-3-4列シート配置）および最大15名乗り（2-3-3-3-4列シート配置）の仕様が用意されています。

車体のサイズに関わるホイールベースは、標準（レギュラー）とロング（エクステンデッド）の2種類から選択可能です。搭載されるエンジンは、仕向け地や仕様によって多様ですが、主要なものとしては、4.3L V型6気筒、6.0L V型8気筒ヴォーテック、CNG（圧縮天然ガス）やLPG（液化石油ガス）にも対応する6.0L V型8気筒ガシアス仕様、そして2.8L 直列4気筒デュラマックス®ターボディーゼルといった複数の選択肢が用意されています。また、GMのGMCブランドからは、エクスプレスの兄弟モデルにあたるGMC・サバンナが販売されています。

歴史

初代（1995年～2002年）

1996年型モデルとして市場に投入されたエクスプレスは、シボレー・バンの後継という位置づけでした。1971年以来となる全く新しいデザインが採用され、当初からパッセンジャー仕様とカーゴ仕様が設定されました（ただし、初期のカーゴモデルは「シボレー・バン」の名で販売された時期があります）。GMCブランドでも、バンデューラおよびラリーの後継としてサバンナが登場しました。

このモデルチェンジにおける大きな変更点の一つとして、フロントアクスルが大幅に前方に移動し、前輪が助手席スペース下から独立した位置に変更されたことが挙げられます。これにより、特に助手席の足元空間が大幅に拡大され、快適性が向上しました。エンジン自体は先代と同程度の排気量でしたが、エンジンを覆うカバーは小型化されています。安全装備の面では、車両総重量3.8トン未満の全車型にデュアルエアバッグが標準装備化され、1997年型からは全車型に拡大適用されました。外観では、ベースグレードのカーゴモデルには一般的なハロゲンシールドビームヘッドランプが、LSグレードなどにはより洗練された複合ヘッドランプが採用されました。

1999年にはマイナーチェンジが実施されました。この変更と同時期に、シボレー・バンが生産を終了し、カーゴ仕様も正式に「エクスプレス・カーゴ」へと名称が変更されました。

2代目（2003年～）

2003年にエクスプレスおよびサバンナは改良を受けました。これは厳密には大規模なマイナーチェンジに近い変更でしたが、一般的にはこのモデルを2代目として扱います。

この改良では、フレームとシャシーが刷新されたほか、フロントガラス周辺を含むボディワークが見直されました。ボンネットの位置は先代よりも高くなり、フロントグリルは1999年に登場した同ブランドのフルサイズピックアップトラックと共通性を持つデザインに変更されています。車内ではダッシュボードが一新され、デュアルステージエアバッグの導入に伴い、車載ネットワークとしてマルチプレックス配線が採用されました。

実用性の面では、助手席側に60対40分割式の観音開きドアが設定され、2014年型までは運転席側にも同様のドアがオプションで選択可能でした（これは標準ホイールベースかつ両側ドア仕様のモデルに限られました）。

モデルライフを通じて、安全装備や機能は順次強化されています。2006年には2500モデル（主にカーゴ）が一時廃止されました。2008年にはエクスプレス・パッセンジャーにサイドカーテンエアバッグと車両安定性制御（ESC）が標準装備化されました（ESC自体は2005年からカーゴ3500に装備済みでした）。また、ステアリングホイール、シート、メータークラスターのデザインも改良されています。2011年にはダッシュボードが再度更新され、Bluetooth接続やUSBポートなどの現代的な機能が追加されました。2013年型のエクスプレス・パッセンジャーの上位グレードでは、カーナビゲーションシステム、バックカメラ、パーキングアシスト機能が装備されるようになりました。

2015年には、カーラジオがデジタル対応となり、ダッシュボードには120ボルトのAC電源コンセントが追加されました。2018年型では、エクスプレス・パッセンジャーの上位グレードが複合ヘッドランプを採用し、これにより全車型から旧式のシールビームヘッドライトが廃止されました。同時に、死角監視システムがオプション設定されています。さらに、2019年型のエクスプレス・パッセンジャー上位グレードには、車線逸脱防止支援システムと前方衝突警報機能といった先進運転支援システムが装備されるに至りました。

駆動方式に関しては、エクスプレス・カーゴの1500および2500モデルにおいて、2003年型から2014年型まで全輪駆動（4WD）のオプションが設定されていました。この全輪駆動モデルは、ホイールベースが3429 mmに固定され、エンジンはGM製5.3L V型8気筒のみが組み合わされていました。

長寿モデルであるエクスプレスは、2022年には生産開始から26年目を迎え、シボレー・バンが持っていた25年という生産期間の記録を更新しました。また、同年にCDプレーヤーのオプション設定が廃止されています。

日本での展開

日本へ正規輸入されたエクスプレスは、主にミドルクラス以上のグレードが中心でした。搭載エンジンは5.3L V型8気筒ヴォーテックが標準とされ、一部の輸入キャンピングカー（例：ロードトレック170～210）のベース車両として、よりパワフルな6.0L V型8気筒ヴォーテックが選択可能でした。

かつては、同じコンバージョンモデルとして知られるスタークラフト・Gバンと同様に、三井物産オートモーティブが正規輸入元となっていましたが、2011年末をもって販売、修理、アフターサービスの全ての業務がGMジャパンへ移管され、日本国内での正規販売は終了しました。

また、2008年頃からは、特殊な用途として防弾ガラス仕様に架装された車両が、日本の警察機関である特殊急襲部隊（SAT）などの警護車両としても使用されていたことが知られています。

その他

エクスプレスには、後輪駆動（FR）および全輪駆動（4WD）の駆動方式が用意されています。米国市場におけるベースグレードでは、4.3L V型6気筒ヴォーテックや4.8L V型8気筒ヴォーテックなどのエンジンも選択肢に含まれます。

本モデルのベースとなるシャシーは、シボレー・C1500（GMT800プラットフォームを基にしたGMT820/830）が主ですが、より大型で頑丈なC2500やC3500のヘビーデューティーシャシーをベースとしたモデルも存在します。これらのヘビーデューティー仕様では、米国市場において、いすゞ製の6.6L V型8気筒デュラマックスターボディーゼルや、大排気量の8.1L V型8気筒ヴォーテックといった強力なエンジンが選択可能でした。これらのパワートレインには、強化型のトルクコンバーターを備えるアリソン1000という5速ATが組み合わされていました。C1500シャシーはシボレー・シルバラードなどの他の車種にも使用されており、C3500シャシーの派生として中型トラックのコディアックが存在します。

オプションとして、特殊な用途向けに防弾ガラスを装備することも可能な仕様が存在します。

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