シャインマスカット

シャインマスカット：ぶどうの女王の光と影

シャインマスカットは、日本の農業・食品産業技術総合研究機構（農研機構）で開発された、広島県生まれのぶどう品種です。その人気は近年急上昇し、2022年には栽培面積が国内主要品種であった巨峰やデラウェアを抜き、トップに躍り出ました。「皮ごと食べられる」「種なし」「大粒」「高糖度」という特徴が、高級ぶどうとして広く受け入れられ、国内外に多くのファンを獲得しています。

概要・歴史

シャインマスカットは、広島県東広島市安芸津町にある農研機構のブドウ研究拠点で育成されました。開発が始まった1973年当時、日本ではアメリカ産のデラウェアが主流でしたが、ヨーロッパ産のマスカットは日本の気候に合わず、栽培が難しい状況でした。

そこで、ヨーロッパブドウの食味とアメリカブドウの育てやすさを兼ね備えた品種を目指し、交配がスタートしました。アメリカブドウの「スチューベン」とヨーロッパブドウの「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を交配し、「ブドウ安芸津21号」が誕生。さらに、この安芸津21号に、食味の良いヨーロッパブドウ「白南」を交配することで、マスカット香を持つシャインマスカットが誕生しました。開発には33年もの歳月が費やされました。

1988年に交配された実生から選抜されたシャインマスカットは、「ブドウ安芸津23号」として系統適応性検定試験に供試され、2003年に「シャインマスカット」として命名登録されました。

日本国外への流出と品質低下

シャインマスカットは日本で品種登録されたものの、海外での品種登録が行われなかったため、海外での栽培が自由に行われるようになりました。特に、中国や韓国での栽培が拡大し、品質の低下やブランドイメージの毀損が懸念されています。

韓国産のシャインマスカットは、2014年から本格的に市場に流通し始め、2020年からは中国、ベトナム、香港、米国など19か国・地域に輸出されています。中国での栽培面積は日本の約30倍に達し、その生産量は日本のそれを大きく上回っています。

東南アジアでは、韓国産や中国産のシャインマスカットが日本産よりも安価で販売されており、市場でのプレゼンスを高めています。この状況が続くと、日本産のフルーツが後発であるかのような誤った印象をグローバルに与えかねません。

品質低下

韓国では、シャインマスカットの栽培面積が急増した結果、品質管理が不十分なC級品が出回るようになり、消費者の失望を招いています。

フルーツの苗木は容易に栽培できるため、開発コストや手間を省いて成果物だけを手にすることができます。また、フルーツの流出は追跡や差し止めが難しいため、品質管理の徹底が求められています。

特徴

シャインマスカットは、円筒形の房を持ち、成熟すると黄緑色になります。一粒は約11-12グラムと大粒で、上品なマスカット香が特徴です。糖度は20度程度と高く、酸味は少ないため、強い甘味を感じられます。ジベレリン処理により種がなく、皮ごと食べられるのも魅力です。

シャインマスカットは、ヨーロッパブドウの食味・食感・香りと、アメリカブドウの耐病性を兼ね備えており、栽培しやすい品種です。また、貯蔵性にも優れています。

主な産地

シャインマスカットの主な産地は、日本と韓国です。

シャインマスカットは、その美味しさと手軽さで多くの人々を魅了する一方で、品質低下や海外での栽培拡大といった課題も抱えています。今後もその人気を維持するためには、品質管理の徹底やブランド保護対策が不可欠です。

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