シャドウ・DN7

シャドウ・DN7：マトラV12エンジンの悲劇

1975年、F1コンストラクターのシャドウは、激しい争奪戦を制し、マトラ製のV12エンジンを搭載した新型マシン、シャドウ・DN7の開発に着手しました。このマシンは、前年、マトラを世界メーカー選手権の頂点に導いたMS670Cエンジンをベースに、F1用ヘッドを装着したMS73エンジンを搭載。最高出力505馬力を誇る強力なパワーユニットでした。

DN7のベースとなったのは、シャドウの主力マシンであったDN5です。そのため、外観はDN5とほぼ同じでしたが、大きな違いがありました。それはパワフルなマトラV12エンジンの搭載です。DN5はコスワースDFVエンジン搭載を前提に設計されていたため、重量の重いマトラV12を搭載したDN7は、重量バランスに大きな問題を抱えていました。

ギアボックスには、DN5と同様にヒューランド製のFL200型5速ギアボックスが採用されましたが、ホイールベース調整のため、横置き配置に変更されています。シャシーはアルミニウムモノコック構造、ホイールベースは2670mm、重量は612kg、タイヤはグッドイヤー製でした。燃料と潤滑油はバルボリンを使用していました。

DN7は1975年7月29日にシェイクダウンテストを行い、オーストリアグランプリでジャン＝ピエール・ジャリエがドライブしてデビューを果たしました。しかし、結果はリタイア。続くイタリアグランプリでも同じ結果に終わり、DN7の潜在能力を十分に発揮することはできませんでした。

重いマトラV12エンジンが原因で、DN7は直線速度が伸び悩みました。この重量バランスの悪さは、DN7の開発において克服できない大きな障壁となりました。結果的に、シャドウは同年10月にマトラとの提携を解消し、DN7はわずか数戦の出場でその短い歴史を終えることになったのです。

シャドウ・DN7は、強力なマトラV12エンジンの潜在能力を活かすことができず、重量バランスの問題に苦しんだ、いわば悲劇的なマシンでした。もし、DN7がコスワースDFVエンジンを搭載していたならば、あるいは、シャドウがマトラV12エンジンの特性を活かした設計変更を行っていたならば、その運命は変わっていたかもしれません。しかし、歴史は結果でしか語ることができません。DN7は、F1の歴史において、大きな成功を収めることなく、短期間で忘れ去られてしまった一台として記憶されることでしょう。

基本スペック

シャーシ名: DN7
シャーシ構造: アルミニウムモノコック
ホイールベース: 2670mm
重量: 612kg
タイヤ: グッドイヤー
ギヤボックス: ヒューランド・FL200 5速
エンジン名: マトラ・MS73
気筒数・角度: V型12気筒
排気量: 2992cc
燃料・潤滑油: バルボリン

参考文献

* 大串信「1000分の1秒のヒーロー列伝 連載31 SHADOW DN7-1A」『F1グランプリ特集』1992年7月号、ソニー・マガジンズ、1992年、117-121頁。

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