シャマシュ・シュム・ウキン

シャマシュ・シュム・ウキン：バビロンの王、反逆者、そして謎に包まれた死

シャマシュ・シュム・ウキン（在位：前668年-前648年）は、古代メソポタミアのバビロン王であり、アッシリア王エサルハドンの息子として知られています。彼はアッシリア王となった弟、アッシュルバニパルと共に王位に就きましたが、その治世は決して平穏なものではありませんでした。共同統治から一転、反乱を起こし、最終的には悲劇的な結末を迎えることになります。

生い立ちと王位継承

エサルハドンは、本来であれば王位継承者となるはずだった長男を失った後、シャマシュ・シュム・ウキンをバビロンの王位継承者に指名しました。同時に、弟のアッシュルバニパルをアッシリアの王位継承者としたのです。この決定は、アッシリアとバビロニアの王位を分割するという異例のものであり、後の歴史に大きな影響を与えることになります。

背景には、母親の出自が関係しているという説があります。アッシュルバニパルの母がアッシリア出身であるのに対し、シャマシュ・シュム・ウキンの母はバビロン出身であったとされ、このことが王位継承に影響を与えた可能性があるのです。エサルハドンは、バビロニア人の血を引くシャマシュ・シュム・ウキンをバビロンの王とすることで、両国の安定を図ろうとしたのかもしれません。

しかし、エサルハドンの死後、シャマシュ・シュム・ウキンはアッシュルバニパルの承認なしには政治的な決定を下すことができず、その関係は次第に悪化していきます。

反乱、そして死

アッシュルバニパルの高圧的な統制からの脱却を試みたシャマシュ・シュム・ウキンは、紀元前652年に反乱を起こします。彼はアッシリアに敵対する勢力を糾合し、大規模な反乱を試みましたが、最終的にはアッシュルバニパルによって鎮圧され、バビロンは包囲されることになります。

2年間の包囲の後、バビロンは陥落し、シャマシュ・シュム・ウキンは悲劇的な最期を迎えます。彼の死については、宮殿で自ら火を放ったという説が一般的ですが、正確な状況は不明です。同時代の記録には、「残酷な死を迎えた」と記されているのみであり、焼身自殺であったのか、処刑されたのか、あるいは事故死であったのか、様々な憶測を呼んでいます。

歴史的評価と遺産

シャマシュ・シュム・ウキンの反乱は、アッシリア王家の書記官たちにとって、記録することが難しい出来事でした。彼はアッシリア王家の一員でありながら、反逆者でもあったため、その運命をどのように記録するべきか、苦慮したと考えられます。アッシュルバニパル自身も、シャマシュ・シュム・ウキンの死について直接的な言及を避け、あたかも最初から存在しなかったかのように扱っています。

しかし、シャマシュ・シュム・ウキンの治世は、アッシリアとバビロニアの関係を考える上で重要な意味を持っています。彼の反乱は、バビロニアの独立を求める動きの表れであり、その後の歴史に大きな影響を与えました。また、彼の死は、アッシリア王家における兄弟間の権力闘争の悲劇的な結末として、記憶されることになります。

シャマシュ・シュム・ウキンは、バビロンの王として、そしてアッシリアに対する反逆者として、その名を歴史に刻みました。彼の生涯は、古代メソポタミアの複雑な政治情勢と、人々の葛藤を物語るものとして、今もなお私たちに問いかけ続けています。

彼が用いた称号は šar Bābili（バビロンの王）であり、Šamaš-šuma-ukin は「シャマシュ神は後継者を立てり」という意味です。

もう一度検索