シャモサウルス

シャモサウルス：砂漠に生きた盾竜

シャモサウルス（Shamosaurus scutatus）は、白亜紀前期（アプチアンからアルビアン）に現在のモンゴル、ゴビ砂漠に生息していたアンキロサウルス科に属する草食恐竜です。「砂漠のトカゲ」を意味する学名が示すように、乾燥した環境に適応した姿をしていたと考えられています。

発見と命名

シャモサウルスの化石は、モンゴルのフフテクスカヤ層で発見されました。ホロタイプ標本PIN N 3779/1は、ほぼ完全な頭骨と顎で構成されています。また、部分的な骨格と装甲からなるパラタイプ標本も発見されています。これらの化石に基づいて、1983年にロシアの古生物学者、タチアナ・トゥマノワによって新属新種 Shamosaurus scutatus として命名・記載されました。

属名の「シャモサウルス」は、中国語（元々は日本語）で「砂漠」を意味する「沙漠（shā mò）」と、古代ギリシャ語で「トカゲ」を意味する「σαυροσ（sauros）」を組み合わせたものです。これは、化石がゴビ砂漠で発見されたことに由来します。種小名の「scutatus」は、ラテン語で「盾で武装した」という意味で、シャモサウルスが持っていたであろう装甲板を表現しています。

ゴビサウルスとの比較

シャモサウルスは、同じゴビ砂漠で発見されたゴビサウルスという曲竜類と、いくつかの点で類似しています。例えば、丸みを帯びた鱗状骨、大きな楕円形の眼窩窓と外鼻孔、狭く三角形の吻部（くちばし）、頬骨の隆起、後頭骨傍の突起などが挙げられます。しかし、両者には識別可能な違いも存在します。

上顎骨の歯列の長さ
ゴビサウルスでは基翼状骨と翼状骨が癒合していない
ゴビサウルスでは前上顎骨突起の上に細長い鋤骨が存在する
ゴビサウルスにはなくシャモサウルスのみに存在する頭部の造形

これらの違いから、シャモサウルスとゴビサウルスはそれぞれ異なる属に分類されています。

特徴

シャモサウルスの頭骨は、他の初期のアンキロサウルス類と比較して、いくつかの特徴があります。吻部は比較的狭く、三角形の形状をしています。眼窩窓は大きく、楕円形をしています。また、頭部には装甲板が配置されていたと考えられますが、具体的な配置や形状はまだ完全には解明されていません。

シャモサウルスの体長や体重は、完全な骨格が発見されていないため正確には不明です。しかし、頭骨の大きさから推定すると、全長は約5メートル程度だったと考えられています。体重は数トンに達した可能性があります。

生態

シャモサウルスが生息していた白亜紀前期のゴビ砂漠は、現在よりも温暖で湿潤な気候だったと考えられています。しかし、乾燥した地域も存在し、シャモサウルスはそうした環境に適応して生活していたと考えられています。植物食性であり、硬い植物を噛み砕くための丈夫な歯を持っていました。また、装甲板は捕食者から身を守るための武器として機能していたと考えられます。

系統

シャモサウルスは、アンキロサウルス科の中でも比較的原始的な位置に属すると考えられています。アンキロサウルス科は、白亜紀後期に多様化し、ノドサウルス科と並んで装甲恐竜の代表的なグループとなりました。シャモサウルスは、これらの進化したアンキロサウルス類の祖先にあたる可能性があります。

結論

シャモサウルスは、ゴビ砂漠の過酷な環境に適応した、初期のアンキロサウルス類の一種です。その化石は、装甲恐竜の進化の過程を理解するための貴重な情報を提供してくれます。今後の研究によって、シャモサウルスの生態や系統上の位置づけがさらに明らかになることが期待されます。

参照

Shamosaurus in the Dino Directory

もう一度検索