シャルトル学派

シャルトル学派とは

シャルトル学派（École de Chartres）は、中世フランスのシャルトル大聖堂附属学校で活躍した思想家たちのグループを指します。特に12世紀、ベルナールを中心に、プラトン哲学とアラビアの自然科学の成果を統合し、当時の学問の中心地であったパリを凌ぐほどの隆盛を誇りました。

シャルトル大聖堂附属学校の歴史

シャルトル大聖堂附属学校の起源は5世紀に遡りますが、10世紀にはオーリヤックのジェルベールの弟子フルベルトゥスが赴任し、医学・神学が盛んになりました。ジェルベール自身も後の教皇シルウェステル2世であり、アラビア科学に通じた学者でした。その後、12世紀に入ると、ベルナールの登場によって学問が大きく発展し、シャルトルは学術の中心地としての地位を確立しました。

学派の特徴

シャルトル学派は、古代の自由七科（リベラル・アーツ）を復興しました。自由七科は、文法、論理学、修辞学の三学と、算術、幾何、天文、音楽の四学から構成されています。三学は文献研究を重視し、四学は自然現象に対する考察を深めることを目的としていました。

ベルナールは、古典古代の学問を「巨人」に例え、自分たちは「小人」ではあるものの、巨人の肩に乗ることで、巨人よりも多くのもの、遠くのものを見ることができると述べました。この比喩は、古典研究の重要性と、それを基盤とした新たな知識の創造を示唆しています。

ベルナールの弟ティエリは、プラトンの『ティマイオス』を基に、聖書の創世記を科学的に解釈しようと試みました。当時ラテン語訳で入手可能だったプラトンの著作は限られていましたが、その中でも『ティマイオス』は特に重要な役割を果たしました。彼は奇跡ではなく、因果関係として世界を理解しようとしたのです。

評価と論争

シャルトル学派という名称は、19世紀の研究者によって名付けられました。彼らは12世紀ルネサンスの中心として注目されましたが、実際にシャルトルで学派と呼べるほどの人材が輩出したかについては異論もあります。ベルナールは確かにシャルトルで活動しましたが、ティエリはパリを中心に活動していました。この点については、さらなる研究が必要です。

シャルトル学派の遺産

シャルトル学派は、中世の学問と思想に多大な影響を与えました。彼らは古代の知識を尊重しつつ、それを超える新たな視点を提供しました。特に、プラトン哲学と自然科学の融合、古典研究の重要性、そして科学的な思考方法の導入は、後の学問の発展に大きく貢献しました。彼らの活動は、12世紀ルネサンスの重要な一部分として、今日でも高く評価されています。

関連文献

以下はシャルトル学派に関連する重要な文献です。

『中世思想原典集成8 シャルトル学派』（平凡社、2002年） - 日本語訳
詩集（シャルトルのベルナルドゥス）
プラトン註釈（同上）
ボエティウス デ・ヘブドマディブス註解（ギルベルトゥス・ポレタヌス）
宇宙の哲学（コンシュのギヨーム）
プラトン・ティマイオス逐語註釈（同上）
六日の業に関する論考（シャルトルのティエリ）
ヘプタテウコン 七自由学芸の書（同上）
コスモグラフィア 世界形状誌（ベルナルドゥス・シルヴェストリス）
メタロギコン（ソールズベリーのヨハネス）
創世記についての小論考（アラスのクラレンバルドゥス）
アンティクラウディアヌス（アラヌス・アブ・インスリス）

関連項目

12世紀ルネサンス
ネオプラトニズム

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