中世思想原典集成

中世思想原典集成：キリスト教思想史を網羅する大叢書

『中世思想原典集成』は、平凡社より刊行された、古代から近世初期までのキリスト教神学と哲学に関する重要な文献を翻訳・収録した叢書です。上智大学中世思想研究所が編纂にあたり、1992年から2002年にかけて全21巻が刊行されました。その内容は、初期キリスト教の教父たちの著作から、スコラ学の隆盛、神秘主義、そして近世初期のスコラ学までを網羅し、中世ヨーロッパの知的・精神文化を深く理解するための貴重な資料を提供しています。

集大成された内容

本集成は、単なる文献集ではなく、中世キリスト教思想史の体系的な理解を促進するよう設計されています。全21巻は、時代や学派、地域などを考慮して構成されており、各巻は特定のテーマや思想家、あるいは時代を深く掘り下げています。例えば、初期ギリシア教父、盛期ギリシア教父、後期ギリシア教父・ビザンティン思想といった巻では、東ローマ帝国におけるキリスト教思想の発展をたどることができ、初期ラテン教父や後期ラテン教父といった巻では、西ローマ帝国におけるキリスト教思想の発展をたどることができます。また、スコラ学に関しては、前期スコラ学、シャルトル学派、サン＝ヴィクトル学派、盛期スコラ哲学、そして後期スコラ学と、それぞれの時代や学派の特徴を捉えた構成となっています。さらに、イスラーム哲学、フランシスコ会学派、女性神秘家、ドイツ神秘思想、中世末期の神秘思想といった巻では、中世思想の多様性を示す重要な資料が収録されています。

重要な思想家と著作

本集成には、アウグスティヌス、アンセルムス、トマス・アクィナスといった中世を代表する思想家の主要な著作が多数収録されています。彼らの著作を通して、神の存在証明、三位一体論、自然神学、倫理学といった重要なテーマについて、深く理解することが可能です。また、オリゲネス、グレゴリウス、アヴィセンナ、アヴェロエスといった、東西の思想家を包括的に扱っている点も特筆すべき点です。

第Ⅱ期の刊行と精選版

2018年春からは、第Ⅱ期として新たな刊行が始まりました。トマス・アクィナスやアンセルムスの著作集の刊行に加え、既存の集成から重要な部分を精選した『中世思想原典 精選』（全7巻）も平凡社ライブラリーとして刊行され、より幅広い層に中世思想へのアクセスを提供しています。

各巻の内容

各巻は、それぞれの時代の背景や思想の流れを解説した詳細な解説を付すことで、専門家でなくても理解しやすいよう配慮されています。また、巻末には索引がつけられており、特定のキーワードや人物、作品を容易に検索することができます。

結論

『中世思想原典集成』は、中世キリスト教思想史を学ぶ上で、必要不可欠な資料集と言えるでしょう。膨大な内容と質の高い翻訳、そして詳細な解説によって、研究者のみならず、中世思想に興味を持つすべての人にとって、貴重な資源となっています。その充実した内容と、第Ⅱ期の刊行、精選版の発行により、今後も中世思想研究において重要な役割を果たし続けることが期待されます。

もう一度検索