シャルル・ド・コンブルース

シャルル・ジュール・フェリックス・ド・コンブルース

シャルル・ジュール・フェリックス・ド・コンブルース（仏: Charles Jules Félix de Comberousse、1826年7月31日 - 1897年8月20日）は、19世紀後半のフランスで活躍した傑出した数学者、教育者です。首都パリに生を受けたコンブルースは、その生涯を通じて数学教育の発展に貢献しました。

経歴

彼の教育者としての道のりは、1850年に権威あるエコール・サントラルに入学したことに始まります。卒業後、コンブルースはフランス国内の様々な著名な教育機関で数学の教鞭を執りました。具体的には、コレージュ・シャプタルや、フランス農村工学学校、フランス国立工芸院などで、1886年まで熱心に指導にあたっています。特にエコール・サントラル・パリにおいては、1862年から1890年にかけて、運動学と応用力学という重要な分野を担当し、長きにわたり多くの学生を育成しました。彼の講義は、理論と実践を結びつけるものとして高く評価されました。

主な業績

コンブルースの学術的な功績の中でも特筆すべきは、同僚であったウジェーヌ・ルーシェとの共同作業によって生まれた一連の幾何学教科書です。これらの教科書は、その優れた構成と分かりやすい記述から、フランス国内の教育機関で広く採用され、幾何学教育の標準となるほど高い評価を得ました。教科書はフランス語圏にとどまらず国際的にも注目され、遠く離れた日本においても、明治時代から大正時代にかけて複数の翻訳が出版されています。樺正董や小倉金之助といった当時の著名な数学者によって日本語に訳されたこれらの書籍は、日本の近代数学教育にも大きな影響を与えました。主な邦訳書には以下のようなものがあります。

『普通平面幾何学教科書』（樺正董 訳、1896年）
『平面幾何学教科書』（樺正董 訳、1897年）
『立体幾何学教科書』（樺正董 訳、1897年）
『初等幾何学 第1巻 平面之部』（小倉金之助 訳、1913年）
* 『初等幾何學 第2卷 空間之部』（小倉金之助 訳、1915年）

これらの翻訳書は、日本の数学学習者にとって重要な資料となりました。

その他の著作

教育活動や教科書執筆の傍ら、コンブルースは自身の研究成果や教育に関する著作も発表しました。代表的なものとしては、母校の歴史をまとめた『Histoire de l'École centrale des arts et manufactures』（1878年）や、ジャン＝ヴィクトル・ポンスレの業績に関する『Notice sur la Mécanique industrielle de Jean-Victor Poncelet』（1878年）、そして講義録である『Cours de mathématiques』（1862年）などがあります。これらの著作は、当時の技術教育や応用数学の研究状況を知る上でも価値のあるものです。

栄誉

長年にわたる教育界への貢献と学術的な功績が認められ、コンブルースはフランス国家からレジオンドヌール勲章シュヴァリエを授与されました。

晩年

1897年にその生涯を閉じた後、コンブルースの遺体はパリのモンマルトル墓地に埋葬されました。そこには、彼の父アレクシス・ドコンブルース、母フェリシー・ソントナ（レジェ＝フェリシテ・ソントナの娘）、そして妻シャルロット・リッチーも共に眠っています。

シャルル・ジュール・フェリックス・ド・コンブルースは、優れた教育者、そして特に質の高い幾何学教科書を通じて、後世に多大な影響を残した数学者として記憶されています。

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