シャルル・フィリジェ

シャルル・フィリジェ（1863年11月28日 - 1928年1月11日）は、フランスの画家であり、ポスト印象派と象徴主義の双方に影響を受けた作風で知られています。彼は、ポール・ゴーギャンをはじめとする多くの画家たちとともに、ブルターニュ地方のポン＝タヴァンで活動した「ポン＝タヴァン派」の重要なメンバーでした。

生涯

フィリジェは、フランス北東部のオー＝ラン県タンで生まれました。父親はミュルーズで壁紙製造業を営んでおり、その影響からか、フィリジェは幼少期から装飾美術に興味を持ちました。その後、パリに移り、私立の美術学校であるアカデミー・コラロッシで絵画を学びました。

1888年、フィリジェはブルターニュ地方のポン＝タヴァンに移住し、画家としての活動を本格化させました。ポン＝タヴァンでは、ポール・ゴーギャンと出会い、ポール・セリュジエやシャルル・ラヴァルといった画家たちと親交を深め、「ポン＝タヴァン派」として共同で作品制作を行いました。また、セリュジエを中心とする「ナビ派」の画家たちとも交流を持ち、その活動にも参加しました。これらの活動を通じて、フィリジェは自身の画風を確立していきました。

フィリジェは、パトロンであったアントワーヌ・ド・ラ・ロシュフコーから定期的な経済的支援を受けていました。この支援により、彼は創作活動に専念することができました。フィリジェの作品は、パリのアンデパンダン展や、画廊「Le Barc de Boutteville」で開催されたナビ派の展覧会、さらには象徴派の展覧会である「薔薇十字サロン」などにも出品され、一定の評価を得ました。

初期のフィリジェの作品は、ポスト印象派の画家であるエミール・ベルナールの影響を強く受けていましたが、次第に単純化された構成と独特の色使いによる、より象徴主義的なスタイルへと変化していきました。彼の作品は、独特な構図と、内面的な感情を表現する色彩によって、見る人に深い印象を与えました。

しかし、1895年にゴーギャンがタヒチへ出発すると、「ポン＝タヴァン派」の活動は徐々に低迷していきました。それに伴い、フィリジェの画家としての成功も陰りが見え始めました。パトロンであったロシュフコーからの支援も打ち切られ、経済的に困窮したフィリジェは、アルコールと薬物に依存するようになりました。友人であった画家たちとも疎遠になり、孤独な生活を送るようになりました。

晩年のフィリジェは、ブルターニュ地方の宿を転々とし、アルコール依存症の治療のため病院に入院しました。その後、1928年にブレストで亡くなりました。

再評価

長い間、フィリジェは忘れられた存在でしたが、1948年に文学者でシュルレアリストのアンドレ・ブルトンによって「再発見」されました。ブルトンは、フィリジェの作品を高く評価し、彼を「シュルレアリストという言葉が生まれる前のシュルレアリスト」と評しました。この再評価によって、フィリジェの作品は再び注目を集めるようになり、今日では、ポスト印象派から象徴主義へと移行する時代の重要な画家の一人として認識されています。

作品の特徴

フィリジェの作品は、初期にはポスト印象派の影響が見られますが、次第に単純化された構成と、独特の色彩感覚が特徴的な象徴主義的なスタイルへと変化していきました。彼の絵画は、現実の世界を描写するのではなく、内面的な感情や精神性を表現しようとするものでした。また、細部にわたる緻密な描写と、象徴的なモチーフの多用も、フィリジェの作品の特徴です。

まとめ

シャルル・フィリジェは、ポスト印象派と象徴主義という二つの潮流の中で、独自の画風を確立した画家です。ポン＝タヴァン派の一員としてゴーギャンらと活動し、ナビ派にも影響を与えましたが、晩年は不遇でした。しかし、アンドレ・ブルトンによる再評価によって、今日ではその芸術性が広く認められています。

参考文献

* Peter H. Feist e.a.: Het Impressionisme (samenstelling Ingo F. Walther), Taschen, München, 2010. ISBN 9783836522908

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